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□湖月の落涙 vol.3
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「痛たたたた…」


鼻を押さえ涙目になりながら身体を起こしてみれば、薄暗い部屋のベッドに猛獣がニ体
横たわっている。
常に周りを警戒し神経を張り巡らせている銀髪の剣士は、その頭部を古傷の刻まれた
腕に乗せ、緊張を解いた穏やかな表情で規則正しい寝息を立てていた。
そんな貴重な状況を邪魔する奴はかっ消すと言わんばかりに威嚇して来るのは、闇に光る
緋色の双眸。XANXUSは既に目を覚まし、震える小動物の存在を捉えている。


(XANXUS起きてる…じゃあ出て来ないのって…)
「ん………朝…かぁ…」




まだ夢と現実の間をさ迷う、掠れた声。




「まだだ」
「…起きてお前の飯を…用意させ…ねーと…」
「いいから寝てろ」


腕枕の役割を果たしている上腕二頭筋はそのままに、比較的自由の効く右の掌で頭部を
引き寄せ前髪ごと額にキスをすると、スクアーロがにへらっと笑った。


「なんだぁ…今日は随分と…優しーじゃねぇ…か…」


脱力し、腹の上でぴくりとも動かなかった右手が、漆黒の髪を求めて気だるげに行動を
開始する。宙をさ迷ったのちに目当ての感触を探し当てた細く長い指が、さらりとした
真っ直ぐな髪と戯れ始めた。
指に絡めてみたり、流れのままに梳いてみたり。
髪をいじられているXANXUSに拒否する気配はない。
ただじっと、寝ぼけた参謀のされるがままになっている。




(こっ…これどうやって起こしたらいいのー!?)




そんなツナの心情を読み取ったのか、のそりと身体を動かし、覆い被さるように顔を
近付ける。唇が触れる直前、緋色の瞳は挙動不審な小動物にちらりと視線を移すと、
微かに口端を上げた。


「んっ…?」


最初は啄ばむようなキスも、角度を変え何度も繰り返されるうちに舌が絡み合う深いものへと
変化して行く。髪と戯れていた指も、これは自分のものだと確認するかのように、XANXUSの
広い背中を撫でまわし始めた。
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