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□湖月の落涙 vol.3
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「困ったわねぇ…」


快晴の空の下、朝食の準備や出発の支度をする雑魚兵達が、時間に遅れたら殺されるとばかりに忙しなく働いている。
澄んだ空気に空腹を焦らす煙が立ち上り、その中を泳ぐように一羽の鳥が歌いながら飛んで行った。


「スクはこの中なのね?」
「自分の寝床にもいねーし、レヴィがそこで固まってるって事はそーなんじゃね?」
「一晩中“あれ”を聞いてたんなら、そりゃ固まるわね」
「この変態オヤジ、覗いて抜かなかっただけましなんじゃないですかー」
「ししっ、どーだか」


“XANXUSを起こす”という最重要任務をこなせるのはヴァリアー内にスクアーロしか存在しないにも関わらず、その本人が一緒になって寝ているとなると…他の誰かが犠牲になるしか方法はない。うまく行けば腕の一本程度で済むだろう。
自分で立候補する猛者はいないのかとルッスーリアが見回してみても、当然の如く誰一人として視線を合わせる者はいなかった。


「フランちゃんどう?何事も経験よ」
「お断りしますー。ミーは縦社会に生きる身ですから先輩を差し置いてそんな事…ってな訳でベルセンパイ行ってらっしゃーい」
「ざけんなこのクソガエル。てめーは単に面倒くせーだけだろーが」
「あれー。わかっちゃいました〜?」
「ボス起こす前にまずてめーを殺す…ってか、やっぱりてめーが起こしに行ってボスに殺されて来い」


暗殺部隊にも存在していた譲り合いの精神。
このまま不毛なやり取りが続き、いつもならスクアーロ一人で済んでいる寝起きの鉄拳を全員でくらう羽目になるのかと一抹の不安がよぎったベルフェゴールは、ふと視界の端にイレギュラーな人影を捉えた。




「ししっ、生贄みーっけ」




ポケットに手を突っ込み、足取り軽く近寄って言葉巧みにおびき寄せる。
何の疑いもなくテントの入り口までやって来たその男は「おはようございます」と陽だまりのような笑顔を見せた。


「そーいう事だから」
「え?どういう事?」
「うちのボス起こして来て!沢田っ!」
「でぇっ!?」


肩をぽん、と叩かれたかと思うとベルフェゴールの飛び蹴りが炸裂。
つんのめった先の入り口はフランがご丁寧にめくってくれるという連携プレーで、ツナは眠れる獅子の巣へと転がり込んだ。
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