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□RUSTY NAIL
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「やっぱりちょっと無理があるかしら…」


プロテインをベースにしたカクテルを開発しようとルッスーリアがバーカウンターの中で試行錯誤していると、重厚な扉が開きXANXUSが現れた。


「お疲れ様ですボス、何かお作りしましょうか」


ソファにどっかりと腰を下ろし、テーブルに足を乗せる。
肘を付いて目を閉じ、短く息を吐く。
乱暴にして威厳漂う一連の動作をルッスーリアはうっとりと眺めていた。




「…ラスティ・ネール」




si.と答え、曇り一つない磨き上げられたグラスを手に取る。
そこにランプオブアイスを一つ。
ウィスキーを注ぎ、次にドランブイを加える。
そのまま静かにステア。
スクアーロが任務で外出しているせいか、やけに静かな部屋に氷の音が響く。


「どうぞ、ボス」
「………」


差し出されたグラスを無言で受け取り口元へと運ぶ。
眉間に皺を寄せてはいるものの、投げ付けて来ない所を見ると味に文句はないのだろう。空になったグラスを突き出され、ルッスーリアは二杯目の作成に取りかかる。
再びXANXUSが琥珀色の液体に口をつけようとしたその時、廊下がにわかに騒がしくなった。


「ゔお゙ぉい!今帰ったぜぇ!」
「お帰りなさい、スク」
「よぉ!ルッスーリア!今回の任務先に面白い奴がいたぞ!」
「どうせ切り刻んじゃったんでしょ?」
「ったりめーだ!俺を誰だと思っ…」




───ガチャン!




「ガッ!」
「…うるせぇ」
「いてーな!クソボス!グラスを投げるな…って、ん?何だこりゃ」


濡れた銀髪から漂う、花の蜜のような香り。


「甘い匂いがするなぁ、こんなもん飲んでたのか」
「ルッスーリア、ウィスキー」
「お前…飲みたかったなら投げなきゃいいじゃねーか」
「いいのよスク、ボスは投げたのとは別のものがご所望なの」
「そうなのかぁ?」
「もうドランブイ入りのお酒を飲む必要がなくなったんですって」
「…余計な事を言うな」


緋色の瞳にじろりと睨まれ、ルッスーリアは肩を竦め口を閉ざした。
何気なく思い付いた戯れに過ぎなかったのだろう。ドランブイを口にした所で心など満たされない。
ただ名前にそんな意味が込められているというだけの話。
けれど勝利の雄叫びを上げスクアーロが戻って来た。
静寂を、くだらない感傷を破壊しながら。
その途端ドランブイを口にする必要がなくなったとなれば。




(スクがボスの心を満たしちゃったのね…妬けちゃうわ)




依然として意味がわからねぇと詰め寄って来るスクアーロを一切無視しウィスキーを飲み干すXANXUSの姿に、サングラスの奥の瞳が柔らかく和む。
おかわりを用意しながらルッスーリアは思った。




何となく悔しいから、この事をスクアーロには教えてやるまい───と。
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