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□開かずの扉
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長い廊下を進むスクアーロは苛立っていた。
通常なら任務終了の報告をする為に向かうのは執務室。なのに今向かっているのはXANXUSの私室。
疲れて帰って来てみれば、休む間もなく気まぐれな暴君の尻拭いが待っている。
今日こそは文句の一つも言ってやろうと息まくスクアーロを目的地の手前で出迎えたのは、壁にもたれて手をひらひらと揺らすルッスーリアだった。


「おかえりなさいスク、会いたかったわ」
「俺はそーでもなかったぞぉ」
「んもう、相変わらず照れ屋さんなんだから」
「照れてねぇ!」
「まぁいいわ、そんな事言おうと思って待ってたんじゃないの」
「何だ」
「ボスの所に行くんでしょ?ちょっと容体を見て来てくれないかしら」




“容体”という言葉にスクアーロが眉をひそめた。




「容体?あいつ具合でも悪いのか」
「えぇ、多分」
「ゔお゙ぉい、多分って何だぁ」


医者は呼んだのか、とスクアーロが問うと、モヒカンとは色違いの一房の前髪が左右に揺れる。


「部屋にいるなら診せりゃいいじゃねーか」
「それが出来ないから困ってるんじゃないのぉ」
「しなるな、うっとーしい」


何処かに雲隠れした訳じゃない、すぐそこに本人がいると言うのにそんな確認一つ出来ないとは。
どいつもこいつも使えねぇ…悪態を付きながらもスクアーロの中では何の驚きもなかった。相手がたとえ医者であろうとも、そう簡単に他人に触れられる事を良しとしない男だ。
そんな男の隣に立つ事が許されているのは自分だけ。
隣に立っていられるだけの力を兼ね備えているのは自分だけ。
そんな自負を胸にXANXUSの私室まで来てみれば…何故自分に様子を見て来いと白羽の矢が立ったのか一目瞭然の光景が広がっていた。


「よぉ、ベスター」


扉の前に寝そべり、近寄るもの全てを咬み殺すべく威嚇していた猛獣は、スクアーロが声をかけるとのっそりと立ち上がり、喉を低く唸らせる。
その猛々しい姿には主と同様に容易に触れる事は叶わない。


「お前のご主人様は具合が悪いんだってなぁ」


にも関わらず、ふさふさの鬣に何の躊躇もなく義手でない方の手を伸ばす。
そのまま頭をぐりぐりと撫でながら話しかければ、通行を許可するとばかりに扉の前から移動した。
無言の催促の視線に従い重厚な扉を開ければ、隙間をすり抜けベスターが主の元へと歩き出す。
スクアーロもそれに続くと、一人で寝るにしては明らかにでかい天蓋付きのベッドで四肢を投げ出す、XANXUSの姿があった。
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