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□OLD PAL
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日溜りを思わせる穏やかな表情が、周囲までも巻き込んで笑顔にして行く黄金色。
近寄る事すら憚られ、視線を合わせただけでその身が切り刻まれる恐怖に包まれる白銀色。
同じ世界に身を置いていながらも対極にいる二人が、同じ部屋で同じ刻を過ごしていた。


「OKだ。わざわざお前が持って来なくても良かったんじゃないのか?」


黒ぶちの眼鏡をかけ書類に目を通していたディーノが顔を上げ、少し離れた場所で腕を組むスクアーロに向かって微笑むと、返って来たのは自分が作成した書類に不備がないのは当たり前だと言わんばかりの鋭い視線。


「万が一修正事項があった場合、俺がここで直した方が手っ取り早いからなぁ」
「そーいうとこ真面目だよな」
「チッ…うるせーな、用が済んだなら俺は帰るぜぇ」


久しぶりに顔を会わせたというのに、かつての級友はもう銀髪をなびかせ扉に向かって歩き出している。
次に会えるのはいつになるかわからない。
その時は敵かもしれない。
味方かもしれない。
それ以前に、その日まで互いの命の灯が灯っている保証がない。
そう考えると今この再会が終わってしまう事が何となく惜しくて、ディーノは思わずスクアーロを呼び止めた。


「なぁ、ちょっと付き合わないか」
「あ゙ぁ?何処へ」
「キャバッローネ自慢の一室ってとこかな」
「…つまんねー場所だったら三枚におろすぞ」


渋々了承したスクアーロの気が変わらないうちに。
廊下ですれ違う黒服の幹部は勿論の事、掃除のおばちゃんにまで軽口を叩かれながらディーノは目的地へと先導する。
後ろを付いて歩き、その様子を終始無言で眺めていた剣士はふいに口を開いた。


「てめーは相変わらずだな」




立ち止まったディーノは首を傾げた。




「そうか?」
「ファミリーの雰囲気が甘ったるくて吐き気がするぜ」
「はは!そりゃヴァリアーに比べたら何処だってそうだろ」


その甘ったるいファミリーを守る為に自分は存在する、と言い切る姿にはへなちょこと言われていたあの頃にはなかった風格が漂う。
それでも人を惹き付けてやまない笑顔はやはり相変わらずと言わざるを得ない。
再び無言の空気に包まれながら到着したそこは、地下にある小さな扉だった。
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