君と私

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ポケモンセンターのバトルフィールド近くでシンジは本を読んでいた。

ルカはシルバーにしばらく預けていたグラエナと遊んでいた。

遊んで…いるのだろうか。

最早特訓にしか見えないその光景。

何故なら…グラエナがシャドーボールや悪の波動をルカに向けて撃っているからだ。

シンジは怪我だけはするなよと心の中で訴えていた。

そしてチラチラとサトシ達の特訓を見ていたのだった。

そこでドダイトスの背中の木を手入れしている三人組が口を開いた。

ロケット団だということはルカには筒抜けだったが心にしまっている。

今は何もする気はないようだし、どうせ金集めだ。

放って置いても問題は無い。






「いや〜いい枝ぶりですこと。」

「チョキチョキし甲斐がありますにゃ。」

「仕上げはバッチリお任せあれ!」





ソーナンスが出てきた。

いつの間に、どこから出てきたのだろうか。






「無駄口はいいから早くしてくれ!」

「妾がやった方が早かったかもしれんな〜。」






今度はグラエナに寄りかかって座っている。

シンジは心底グラエナが羨ましいと思った。

ロケット団が何か言っている事に気づいたのかそちらに目を向ける。

だがそれもフィールドからの声が聞こえ、すぐにフィールドに目を向ける。





「よし!!来い!!」





シンジは立ち上がって茂みの前に止まって見た。

ルカも近寄って特訓を見た。

グラエナの頭に手を置きながら。

サトシ達の訓練はシンジと似ていた。

ブイゼル、ヒコザル、ピカチュウに一気に攻撃をしかけ、
水鉄砲、火炎放射、10万ボルトで跳ね返すというものだ。

威力を高めるために効果的ではある。

だが、三匹は跳ね返し切れず、押し返されてサトシにぶつかっていった。






「みんな!大丈夫!?」

「ヘヘヘ…このくらい何とも無いぜ!な?みんな!」

「相手の技をこっちの技で防ぐのはいい作戦だが
そのためにはそれぞれの技をもっとキープさせないとな。」

「あぁ。技を出すタイミングをしっかり掴まなきゃ。よし、もう一度だ!」





その様子を二人はずっと見ていた。

それに振り向いたタケシが気づいて近寄ってくる。





「もう旅立ったかと思ったよ。」





抱いていたピンプクを放し、自由にさせる。






「何か俺に言いたいことでもあるのか?」

「シンジというトレーナーに興味を持ってね。
どうしてサトシにヒコザルのことを聞いたんだ?」





シンジはバツが悪そうに目をそらす。

その様子でタケシは気づいたようだ。






「やっぱり気になるんだな。」

「あの猛火を使わないとはな。」

「それが、サトシのやり方だよ。サトシも自分のバトルを作り上げようとしているのさ。
トバリシティでレイジさんに会ったよ。お前が自分なりのバトルスタイルを
作ろうとしているって言ってた。」

「お喋りだな、兄貴は。」

「心配してるんだよ。でも驚いたよ。レイジさんも各地のジムをまわってきたんだな。
あ、そういえば、バトルフロンティアのブレイブシンボルがなかったな。」

「兄貴は…あれだけのバッジを集めておきながらたった一度負けただけで
挑戦することをやめてしまった…。悔しい筈なのに、いつもヘラヘラ笑って…。
俺はそれが許せない。俺は兄貴の様にはならない。
兄貴のようなやり方じゃ駄目なんだ。」





そのとき、フィールドから大きな音が聞こえた。

どうやら上手く弾き返せたようで、三匹以外のポケモンが地面に倒れていた。

ルカは睨みつけるようにそれを見ている。





「大丈夫か?」

「凄いよサトシ!さっきより確実にパワーアップしてるみたいじゃない!」

「あぁ、みんなのおかげだよ。」





サトシとヒカリはシンジとルカが近づいてくるのに気づいたようだ。

後ろにはタケシもいる。






「シンジ?」

「ルカ!」

「ヒカリ、先ほど会ったな。」

「お前のやっていることは、俺と同じだ。」

「何!?これがお前と同じ?」

「ポケモンの技を高めるために他のポケモンに攻撃させる。
どこが違う?」

「それはヨスガジムの催眠術対策よ!」

「ヨスガジムに挑戦するのか?」

「あぁ。お前こそヨスガジムは…?」




シンジは嘲笑い、バッジを見せる。





「勝ったさ、当然だろ。」

「…俺は途中旅の途中でメリッサさんとバトルしてるんだ。
でも催眠術にやられて、何も出来なかった。だから次こそは…。」

「最大パワーで力押し。そんなやり方であのゴーストタイプ達に勝てると思ってるのか?」

「勝てる!!俺もポケモンたちも信じてる。信じてるから…力を合わせて頑張れる!」

「ヌルイな…。」

「シンジ、今の俺達を見せてやる!バトルだ!」

「お前達が猛火を使いこなせたら、と言ったはずだ。」

「言っただろ?俺は猛火には頼らない!」

「…いいだろう。だがポケモンは一体のみ。それで十分だ。」

「あぁ、それでいい。」

「ふむ、圧勝かもしれんな〜。ピカチュウが出て来れば少しはやり甲斐があるかもだが。
それはないだろうな。気持ち的にナエトルを優先しそうだ。」

「そうだろうな。ピカチュウはジム戦に出る。」





ルカは無表情でサトシを見る。

それとは対照的にシンジは冷笑を浮かべていた。
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