君と私

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目の前に現れたグライオンにグライガーは少し押されてしまった。

元々臆病だというのもあってか少し竦んでいるようにも見える。






「わざと進化系を出してきたみたい。」

「それも戦略の内。見事にグライガーは相手に飲まれてしまっている。」

「大丈夫だグライガー。落ち着いて俺の言う通りにやるんだ。いいな?」






グライガーは勢い良く返事をした。

シンジはそれを嘲笑うように鼻で笑った。






「行くぞグライガー!シザークロス!」

「叩き落す攻撃!」

「(早口だな…。)」






グライガーは飛び上がってグライオンへと向かっていく。

だが、グライオンの叩き落す攻撃でシザークロスは命中しなかった。

地面に叩きつけられ、一、二回バウンドして止まった。





「グライガー!」

「これは効いてるぞ。」





グライガーの目は涙目だった。





「頑張れグライガー。砂かけだ!」

「砂かけで、グライオンの攻撃を少しでもはずそうということか。」

「(無駄だと思うが…。)」






ちらりとルカはシンジの顔を見る。

かなり余裕そうだ。

グライガーはグライオンに砂かけを命中させている。





「でも、まるで関係ないって顔してるわね。あのグライオン。」

「鋏ギロチン!」






グライオンは飛び上がって砂かけから脱出し、鋏を大きく開け向かっていく。






「何?グライガー!反撃だ!鋼の翼!」





だが、グライオンが上手だったようだ。

グライオンの鋏がグライガーの首を捕らえて地面に叩きつけた。

その後、グライオンは後方に飛んで元の位置へと戻った。

砂埃が晴れて、再び現れたときには、グライガーは戦闘不能になっていた。






「グライガー!」

「たった一撃で…!」

「鋏ギロチンは当たれば一撃で、相手をダウンさせてしまう技なんだ。
さすがシンジだ。」

「(これが現在の実力差か。とは言ってもシンジも本気は出してはいない。)」





サトシはグライガーを抱き上げて後ろに下げた。

その目はまた涙目だった。

皆、グライガーを励ました。





「よく頑張ったぞグライガー。」





シンジはグライオンをボールに戻した。





「そのグライガーに教えてやれ。負けたのはトレーナーのせいだとな。」





サトシとサトシのポケモンたちはシンジを睨む。

サトシは立ち上がった。





「ここで待って、皆を応援していてくれ。」

「次はコイツだ。リングマ、バトルスタンバイ!」

「(顔怖いぞー。)」

「次はリングマか。」





その時、ヒコザルが一歩前に出た。

そして、サトシに何かを言った。

自分を出せと言っているようだ。





「え?お前が行くって言うのか?」





ピカチュウが頑張れというようにヒコザルに声をかけた。

ヒコザルは勢い良く前に出た。

リングマが雄たけびを上げる。





「面白い。」

「案外、簡単に終わるかもしれんぞ。」

「ヒコザルー!頑張ってー!」

「行くぞ!火炎放射!」





リングマは腕をクロスして受け止めた。





「避けないなんて!?」

「それだけ自信があるんだろう。」

「どうだこの火炎放射。パワーアップしてるだろ?」

「フン!気合玉!」




ヒコザルはリングマの作り出した気合玉を両手を突き出して受け止めた。

何メートルか押されてやっと止めることができた。






「よし!良く耐えたぞ、ヒコザル!穴を掘るだ!」

「地面にアームハンマー!」






アームハンマーは強力なもので立っていると危ない感じだ。

そして、ここは川の近くであり、岩場でもある。

岩で作られた足場が揺れるのは相当危険だ。

それに衝撃で岩が弾丸のように打ち上げられている。

地面の中にいたヒコザルもそれに耐えれなかったようで飛び出てきた。

正確に言うと飛び出せられたのだ。






「ヒコザル!火炎車!」





ヒコザルは空中で火炎車をした。





「受け止めろ!」





リングマは火炎車を受け止め、ヒコザルを捕まえた。





「まだまだ!ひっかく攻撃!」

「秘密の力!」





ヒコザルはひっかくことが出来ず、秘密の力を受けてしまった。

そして、リングマの強烈な頭突きで吹っ飛んだ。





「頑張れヒコザル!火炎放射だ!」






だが、ヒコザルはリングマに怯えてしまって攻撃できない。

そして、秘密の力の追加攻撃を知らなかったようだ。

サトシはそれに気づけなかった。





「どうしたんだ?ヒコザル?」





ヒコザルは後ずさりをし、目を背けてしまった。





「ヒコザルの様子が変よ。」

「ひるんでしまったんだ。秘密の力は通常攻撃に加えて、
場所によって変わる、追加効果がある。岩場のここでは相手をひるませることがあるんだ。」

「その怯え方、追加効果だけか?」

「ヒコザル、しっかりするんだ。」





ポケモンやヒカリも応援する。

その様子をシンジは睨むようにして見る。





「反撃のチャンスはある。諦めるなヒコザル!」





だが、シンジは容赦なくリングマに指示を出す。





「アームハンマー!」

「!ヒコザル!火炎車だ!」





ヒコザルは完全に怯えてしまっている。

技を出すことも出来ず、アームハンマーをもろに受けてしまった。

ヒコザルの体が岩場に食い込んだ。






「ヒコザル!?」





飛び散った岩がヒコザルの上に重なって落ちる。





「ヒ、ヒコザル…?」





呼びかけても、反応が無かった。





「フン、ここまでだな。」

「違う、何かがおかしい。」





その時、地響きがした。

それは、岩が重なっているところで、ヒコザルがいるところだった。

それにはシンジもサトシも驚いた。
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