君と私

□9
2ページ/5ページ

「しっかりしろ!ピカチュウ!!」




サトシはピカチュウに駆け寄る。





「はっはっはっ。勝負ありやな。」





サトシはピカチュウを抱きかかえた。

ピカチュウはひどくダメージを受けたようでつらそうだった。

同時に申し訳なさそうな顔をしている。





「なんか大したことなかったなぁ。俺やったらそのピカチュウ。
バリバリにつよ出来るで。交換せーや。」

「しつこいぞ!!断ったはずだ!」





ピカチュウもサトシの言う事に同意する。

ライチュウは何かを言ったようだ。






「ライチュウが言っとるで。その程度の実力で俺と戦うんは
百万年はぇーってな。」





ショウとライチュウは笑い声を上げながら去っていった。

サトシは立ち上がり、それを睨むように見る。

ヒカリとタケシもサトシの横に駆け寄り、同じように見る。





「レベルの低いバトルだったな。」





その声で、三人はこちらを向く。

シンジとルカは三人に少し近寄った。

それでもその間はかなり空いている。





「シンジ。」

「今のバトル、見てたの?」

「何の参考にもならなかったがな。」

「次は勝ってやるさ。な、ピカチュウ?」




サトシは強気で言った。

ピカチュウも当たり前だと言うように返事をした。





「じゃ、進化でもさせるんだな。互角ぐらいにはなるんじゃないか。」

「育て方にもよるだろう…。」

「もしも、の話だ。」





踵を返して二人は元の道に戻る。






「にしても、あのピカチュウ、大丈夫だろうか。」

「?」

「相当のダメージを受けたようだ。無理をしているように見えた。」

「そんなに気になるのか。あのピカチュウが。」

「…ポケモンに罪はない。トレーナーが全て駄目にしてしまうんだ。」

「……。」




なんとなく、シンジはルカの言いたい事がわかった。

トレーナーのせいでポケモンが不自由な思いをしたらどう責任をとるのだ、と。

同じような目にあったルカだからこそ分かる苦しみ。

親に捨てられ、預けられたところで捨てられ、最後には悪の組織に辿り着いた。

所詮は、自分の強さしかみてくれないところ。

前も後ろも右も左も見させてくれないような場所。

なんとか解放してやりたいが、今は聞くだけが限界。

何もしてやれなかった。

その夜、近くのポケモンセンターで泊まった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ