君と私

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「しかし、この話は後だな」

「……」




後ろでサトシが思い切りオドシシの幻覚に引っかかっていた

先程、シンジが忠告をしてやったばかりだ





「使えない奴。ヒコザル、ひのこ!」

「助けてやるのか」





ヒコザルのひのこでオドシシたちを追い払う

サトシは幻覚から抜けたようで立ち上がった





「シンジ…」




すると、サトシの後ろからオドシシが現れた

それを見るとルカは納得した





「なるほど」

「火炎車!」




オドシシに直撃




「モンスターボール、アタック!」




数回、ゆらゆらと揺れると乾いた音がして停止した

見事、ゲットしたのだ




「サンキュー助かったぜ」




ルカはシンジに駆け寄り、図鑑を一緒に見た




「覚えているのは最低レベルのたいあたりだけか」

「オドシシがほしいならば妾のをやろうか?」

「いや、いい。お前のをもらっても意味はない」

「自分の力でやりたいと?」

「あぁ。…使えないな。お前には用はない!」




オドシシは去っていった





「また逃がすのか?お前の仲間だろ?」

「仲間?ヌルイな」




そして数分後

シンジとルカは迷いの森を抜けた





「あ、シンジ」

「なんだ?」

「あの森にはリングマがいるんだ」

「それを早く言え」

「す、すまない。しかし、戻らなくてもいいみたいだ」

「?」

「お前の言う使えない奴らが誘い出してくれたぞ?ではなく誘い出してくれた」

「無理にやるな」




シンジとルカはその場で振り返る

後ろでタケシとヒカリ、そしてサトシがリングマに追いかけられていた




「どけ!」

「シンジ!」

「ヒコザル、火炎車!」




リングマに直撃




「モンスターボール、アタック!」




元々のダメージもあり、素直にボールに収まった




「うわあ!リングマをゲットした!」

「あぁ。でもアイツはゲットしても能力が低いって判断したら逃がしてしまうんだ」




図鑑を開いて調べている二人を睨むサトシ

ルカはシンジの肩に手を置いて見ている

ブラッキーは構え、とでも言うかのように足に擦り寄っていた





「ふむ、野生にしてはいい方だ」

「まあまあだな。キープしておくか」

「シンジが育てればいいことだから、ね」

「慣れてないのに使うな」

「…すまん」





女らしく、という言葉が頭の中でグルグル回っていた

昔はもう少し可愛らしかったはずなんだが、と黄昏てみる




「シンジ」

「お前まだそのナエトルを持っていたのか」

「え?」

「さっきのバトルでわかっただろ。そいつは使えない」

「どんなポケモンでも一緒に頑張れば強くなれる。もう一度バトルだ!」

「無駄だ。勝敗は見えてる」




シンジは歩き出した

ルカはシンジを見ながらサトシに向かって言った





「自分のポケモンのこともわからんやつが強くなれると思うな。
そして、ポケモンと人間は一緒に強くなどなれない」

「なんだと!頑張ればオレも、ポケモンも強くなれる!!
今までだって、そうやって一緒に強くなってきたんだ!!」

「妾は一番“ポケモンを分かってやれる立場”にある。
だから、共に強くなれないことをこの身をもって知っている」

「それでも、俺たちは強くなれたんだ!」

「本当に、そうなのか?」

「っ!?」





冷たい声

冷たい目

自分を貫くような、背筋が凍るような

そんな恐怖を覚えた






「妾はおそらく誰よりも知っている。裏切られたこともないような
甘ったれた餓鬼がほざくな。どんな壁でも乗り越えられると思うな。
妾たちは人間で、ポケモンはポケモンだ。そこを間違えるなよ」





ルカはシンジの元へ歩く

そんな彼女にハッと我に帰る




「逃げるのか!」

「もう話すことは無い」

「じゃあいかにお前の考えがヌルイか証明してやる!」




ルカはブラッキーを抱いて、振り返る

シンジにいたっては苛立っているように見えた






「オレはナエトルのこと、少しはわかったんだ!」

「そうは見えん」

「シンジはなんでルカには何も言わないのかしら」

「シンジにとってルカは特別なんだろう」





両者は向かい合った

自分が正しいのだと証明するために

少女は何も感じない目で見つめていた

どうせ無駄なことだと諦めていた




「お前から来い」

「ナエトル!たいあたいだ!」

「またそれか。かわしてひっかくだ!」

「かわすんだ!」




ナエトルはそれをかわした




「所詮はその程度か」

「サトシの指示に従った!」

「はっぱカッター!」

「ひのこだ!」




はっぱカッターとひのこはぶつかり合った

ナエトルが指示に従ったからこそ、ルカは冷たい目で勝負を傍観する





「かみつく!」

「ナエトルの動きも速いぞ!」

「いっけー!」

「穴を掘るだ!」

「え?」

「穴を掘るを覚えていたのか!」

「ひっかくだ!」

「全然、どこから攻撃してくるかわからない!」





サトシがうろたえた事で、ナエトルも不安そうにする

ヒコザルは後ろから出てきた




「後ろだ!」




ひっかくは命中した




「ナエトルかみつく!」

「穴を掘る!」

「またかわされた!」

「ひっかくだ!」





ヒコザルはナエトルの周りにある穴から出たり入ったりして惑わせた

そして、ヒコザルは後ろから出てきてナエトルにひっかくをした




「調子に乗りやがって。ナエトル!穴に向かってはっぱカッター!」




はっぱカッターに当たったヒコザルが出てきた




「油断したな。ひのこだ!」

「穴に隠れてかわすんだ!」

「すごい!」

「ヒコザルが掘った穴を上手く利用したな!」

「普通は、利点も理解できれば弱点も理解できるものだが…」

「どんなもんだ!」

「そう来ると思ったよ!穴に向かってひのこだ!」

「あ、不味い!」

「これが、二人の違いであり、差…か」





ナエトルはひのこにやられて穴から出てきた





「草タイプに炎タイプの技は効果抜群よ!」

「あぁ、ダメージは大きいぞ!」

「ナエトル!光合成だ!」

「隙だらけだ。火炎車!」

「穴に隠れてかわせ!」

「そんなことしたらさっきのにのまいよ!」

「ナエトル!俺を信じろ!」

「ならばとどめだ。穴に向かってひのこ!」

「今だ!かみつく!」

「この辺は未熟か。同じ戦術は使うものではない」




冷静に、あくまでも冷静に分析していく

公平に、冷徹に





「やった!」

「そのまま穴に潜れ!」

「……」

「火炎車!」

「不味い!穴の中ではかわせない!」




ルカは飽きたのか体を伸ばしていた

ブラッキーはボールの中に戻っている




「ナエトル!穴から出るんだ!」





だが、ナエトルは穴から出れずに攻撃を受けた

地面に転がるように倒れていた




「ナエトル!ナエトル、大丈夫か?」




ナエトルは立ち上がった




「まだやる気か?」

「まだだ!最後の力を振り絞れ。たいあたりだ!」

「無駄なことを。火炎車!」

「ナエトルーー!!」




煙が晴れたとき、ナエトルは倒れていた

戦闘不能、その四文字しか出てこない




「フン!勝負はついたな!」




皆唖然としていた

サトシは膝をついてナエトルを抱き起こす




「ナエトル、ごめんな。お前の力を引き出してやれなくて」

「だがいいバトルだったぞ」

「あたしたちにもとってもバトルになったわ」




突然、ヒコザルの声が聞こえた

喜んでいるようだ




「あの程度の奴に勝って喜ぶな」




ヒコザルをしまった





「シンジ、少しくらい褒めてやれよ」

「フン。使えない奴はいくら頑張っても使えないんだよ」

「なに?」




その言葉にサトシとヒカリやタケシ、ピカチュウ、ポッチャマが怒った

シンジは後ろを向いて去る

ルカもシンジに追いつこうと走る




「待て!」





だがそれを無視して歩く

サトシは怒りで体を震わせていた




「サトシ、アイツには負けないで」

「俺も同感だ」

「あぁ。アイツには負けない。アイツにだけは絶対に負けたくない!」




一方ルカとシンジは




「トレーナーの基本は出来ていた」

「フン。当然だ。」

「だが、もう少し本気は出せるだろう?」

「当たり前だ。今度、お前と戦いたい。勝つことは出来なくてもな」

「…約束しよう。大丈夫だ。私は待ってる。いつか肩を並べられる。
お前はまだ強くなれる。経験が足りないだけだ」

「あいつらは敵にもならない」

「どんな存在でもいいさ。妾もそうなのだから」

「……」

「さて、クロガネへ行こうか」




サトシたちの前では無表情だったルカは初めて笑顔になった
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