君と私

□11.5
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ミオシティへの道。

ルカはピリピリとしていた。

今まで、こんなルカを見たことなかった為、
シンジはどうすればいいか分からなかった。







「どうしたんだ?」

「何でもない。」






たった一言で終わった。

普段ならば、その後に何か言葉を付け加える。

だが、今回は一言。

シンジはそっと溜め息を吐いた。

理由は分かっていた。

サトシのハヤシガメへの対応。

そう、理不尽なバトルが原因だった。

ハヤシガメは進化したばかりで、体の変化に行動がついていけなかった。

それを、様子から察することもなく無茶な命令をしたサトシ。

ルカはそれが許せなかったのだ。

昔、理不尽な暴力で痛めつけられていたポケモ
ン達を裏側で見たような気がして…。






「ルカ…。」







小さく呟いた愛しい彼女の名前。

悲しみか怒りか…瞳に影を写すルカがこちらに目を向ける。

シンジの目を見た瞬間、落ち着いたのか突き刺すような空気はなくなった。

顔を俯かせ、立ち止まる。

それに合わせるかのようにシンジも立ち止まった。






「すまない…。」

「?」

「妾はまた…お前を困らせてしまった。」

「…使えないヤツ…。」

「…あぁ、妾は本当に…欠陥品だ。」

「違う。俺が使えないヤツだ。」

「何故だ?妾は私情にお前を、シンジを巻き込んでしまう…。」






固く握られた拳。

いつだったか、自分は生まれてはいけなかったと…
何も残っていないと…。

そう言ったときがあった。

それ以前にも見たことがある表情だった。

諦め、絶望…その他にも色々混ざった表情だ。

シンジはルカの頭に手を乗せる。







「俺を頼れ、前にも言った筈だ。」

「……。」

「お前は一人じゃない。俺と一緒に居てくれるんだろ?」






黙って頷く。

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