君と私

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ある日の事だった。

シンジとルカはとある場所で、チャンピオン防衛戦を見ていた。

チャンピオンシロナの相手は四天王リョウ。

虫ポケモン使いだ。

シロナのポケモンは予想通りガブリアス。

対してリョウはドラピオンを出した。

今、始まろうとしている時、サトシ達が走って入ってきた。

あちらもこれを見ようとしているようだった。

シンジは一度そちらに目を向けたがすぐに画面に戻した。

ルカについては見ようともしない。

画面の中からリョウの声が聞こえた。






『ドラピオン、ミサイル針!』

「(最初から主力ポケモン同士の戦いか…だが戦力は圧倒的だな。)」






リョウはシロナのポケモンを一体も倒せずに負けてしまった。

四天王というだけあって、ポケモンの力はそれなりにあったが…。

チャンピオンの前ではその力は無意味ということだろうか。






「あの程度の実力でチャンピオンに挑むこと自体間違っている。」

「お前なら勝てたかもな。」

「妾は負けたことはないからな。」






シンジと共にサトシ達の下へ近寄る。

それに気づいたようで三人はこちらを向く。






「あれからどうした?」

「え?」

「ヒコザルの猛火だ。」

「確かにあのパワーは凄いよ。だけど俺、あのバトルに頼るようなバトルはしない。」

「フン!」

「また、あの状況になったらどうするつもりだ。」

「その時は俺がまた止めてやる!」

「…分かっていないな。止める?そんな表現、好ましくないな。
止めるんじゃない。受け止めてやるんだ。ヒコザルの…苦しみを全て…。」

「え…?」

「妾のトモダチを分かったように口にするな。分かっているのならば…。」

「ルカ。もうやめておけ。」

「シ、シンジ…。そうだな。了解した…。」






どこか悲しそうな儚い表情でルカは去っていった。

その表情の意味は分からなかったが、言葉の意味はなんとなく分かった。

あの猛火でヒコザルは傷つけてしまったというトラウマをもった。

増やしてしまったのだ、ヒコザルのトラウマを。

それを受け止めて、慰めて、一緒にいてやれ。

そう言いたかったのではないか。

三人はそう思った。
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