紅葉


□忘却の彼方に
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四半時もすると意識を取り戻した重里。辺りには紅の木の葉が散り、目を醒ました重里の視界を覆う様に、自らの衣服も紅に染まっていた。

「重里!」
「…あ……?」

ゆっくりと起き上がった重里の身体の傷は全て癒え、目も元に戻っていた。しかし、彼の口から出たのは以外な言葉だった。

「…何で…こんなとこに…」
「 ?! 」
「幸徳井様…?」

更に、自らの血まみれの衣服に気付くと、ぎょっとした様に目を見開く。

「うぉ?!何でこんな血まみれなんだ!?」

彼は全てを忘れていた。そう「呉葉」のことだけを全て…。
これが、彼女の意思だったのだろうか、重里が全てを忘れてしまう事が…。

「うわ、内着にまで染み込んでやがる」

目の前で、何事もなく立ち上がる重里の様子は、およそ一月前までの調子に戻っていた。
重里にとって、これが最良の結果だったのだろうか。彼の周りを名残惜しげに舞っていた紅葉が、弾ける様に消えた。
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