おはなし*

□とある雨の日の夜のお話。
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外は大雨。
大雨は嫌いじゃないけど、雷は・・・。

「雷すごいね。」
「そうだな。」
「綺麗。」
「どこが。」
「稲妻とか綺麗だよ。あ、亮は雷が恐いのか。」
「そ、そんなことないよ。」
「ふーん。」

夏休みの宿題の日記を書く手を止めて若干馬鹿にしたような目で俺を見てくる弟。
ゴロゴロと鳴る雷にびくっとなるとクスクスと笑われる。

「亮、雷に怯えてないで日記ちゃんと書きなよ。最後にまとめてやるの辛いよ。」
「怯えてない!!」
「ほら、手止めない!!」
「・・・日記は大丈夫だよ。サエとテニスしたとかバネとテニスしたとかダビデのダジャレ面白いのに誰も笑わないのはおかしいとか色んなこと書けるから。」
「ダビデのダジャレおもしろいかなぁ?」
「おもしろいじゃん。俺好き。」
「そっか。亮ツボ浅いんだね。」
「馬鹿にしてるでしょ。」
「そんなことないよ。」
「絶対嘘だ・・・。」
「今日の日記おーわり。」

そう言うと淳は日記を閉じてふとんにごろんと寝転んだ。
そしてあくびしながら伸びをする。
その姿は近所の猫によく似ていた。

雨はどんどん強くなっているようだ。
また、雷の音が聞こえた。
結構近い。
びくっとなった俺に気づいた淳はくすくす笑い始める。

「亮昔から雷だめだよね。」
「え!?」
「ぶっちゃけ苦手でしょ、雷。」
「・・・・。」
「嫌いなんだね。」
「いいじゃん。苦手なもの一つくらいあっても。お前初対面苦手だろ。」
「うるさいな。亮は図工も苦手じゃない。」
「俺は絵具が嫌いなの!淳もそんなに絵うまくないだろ!?」
「亮よりはうまいよ!!」
「ほら見て、この絵!!犬!!!」
「それのどこが犬なの?僕のが犬っぽく描けるから!!!」

俺の描いた犬の隣に淳は謎の生き物を描いた。
でも、それは俺の犬とほぼ一緒で。
なんだかおかしくなっちゃって、二人顔を見合わせてくすくす笑いあった。

「やっぱり双子だね。」
「そうだな。どっちもどっちだな。」
「犬はやっぱりこうだよね。」
「うんうん。」
「くすくす。」
「どうした?」
「なんか亮が双子のお兄ちゃんでよかったなって思って。」
「いきなりなんだよ気持ち悪い。」
「亮は僕が弟でよかった?」
「・・・ま、まぁな。」
「くすくす。ありがとさんかく。」
「なにそれ。」
「かわいいでしょ?」

そう言って手で三角を作って嬉しそうに俺に見せてくる。
なんだか俺も嬉しくなって三角を作って淳に見せた。

「これ流行らせたいね。」
「流行らせようよ。」

ゴロゴロ、とまた外で雷が鳴った。
何回鳴れば気が済むんだろうか。

「雷死ね。」
「亮、そんなこと言っちゃだめだよ。雷もがんばってるんだから。」
「もう寝ようかな。」
「亮酷い顔してるよ?」
「うるさいよ、淳。」
「ごめん、ごめん。亮おやすみ。」
「おやすみ。」
「亮、僕が隣にいるから大丈夫だよ。」
「・・・うん。ありがとう。」

目を瞑ると聞こえてくるのは淳の寝息・・・ってもう寝たのか。
でも、その寝息が心地よくて、雷の音はいつのまにか気にならなくなっていた。
おやすみ、淳。



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