ヒルデガルトの庭

□白の塔
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埃っぽい長椅子は普段使われていない部屋に置いてあったため、何年も人が使った形跡はなかった。

そのなんとなく黴臭く暗い部屋に唐突に人の足音が続いて入ってきた。最初の3人のうちの一人が何やら呟くと忽ちそこはただ古いだけで、居心地のよい空間に変わった。3人が長椅子に並んで腰掛けたのを見届けて4人目の人物が口を開いた。
「それで、何故お前達は誰一人驚かないんだ?」背の高いローブ姿の男が言った。
じっと神妙な顔を装って話を聞いていた一人の翠色の瞳が泳ぎ出す。その少年をわざと後回しにすると彼は別の一人の方を見る。
「僕はユーリから聞きました。」灰色の瞳はそう言ってまた伏せられた。
それを聞いた先程の少年が落ちつかな気に首元のチョーカーをいじる。
「ユーリ、君は?」床を見つめていた少女は話し掛けられると一言、「フロルから。」とだけ応えて俯いた。鷹司であるハバネはやはり、といった顔をした。
「フロル、お前が老師の下で見聞きすることの中には機密事項も少なくない。耳聡いお前は人よりも多く口を閉ざしていなければならないのだぞ。自分の知っていることを全て教えてやろうとするのはお前の悪い癖だ。再三言っているが、''例外"も認めない。いいな?」
「はい。」
目に見えて肩を落としてしまったフロルだが、それは説教をされたからではなかった。特別にユーリにだけ教えたつもりだったのに、何時の間にかサクにも伝わっていたせいだった。
それが分かったハバネは気の毒そうな顔をしたが続けて言った。

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