短編集

□新世界
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「サンジくん! これお願〜い!」

「は〜い! ナミさ〜ん!」

「サンジ。これ、よろしくね……」

「は〜い! ロビンちゃ〜ん!」


俺は幸せだ。

レディに尽くす事、それが俺の幸せ。

それはもちろんベッドの中でもそうだ。

レディをヨクする為なら、俺は足の指だって喜んで舐める。


「バカじゃねぇか……?」


マリモはいつも馬鹿にするが、俺はそんな事気にしちゃいない。

まぁ、こいつは腹が立つので一発蹴りを入れておこう。



久しぶりの島だ。

ここにはどんなレディがいるのかと、俺は胸を躍らせ島に降り立った。




しかし、なぜだ。

俺はなぜ、こんな状況に陥ったんだ。

意識を取り戻すと、ここは薄暗い部屋。

もちろん、島の美女達の姿はない。

体には全く力が入らず、起き上がることさえもできない。

一気に地獄に突き落とされた気分だ。


「フ……気が付いたか」


そこに、例の男の声がした。

七武海のピンク野郎だ。

その途端、少し前の記憶が過ぎり、俺はぞっとした。


「てめぇ……ナミさんはどうした!?」

「フッフ……見えねぇか。そこで気を失ったままだ」

「……ナミさん!?」


なんとか頭を持ち上げ、その愛しい姿を確認する。

息はあるようだが、確かに気を失っているようだ。


「ナミさん! 大丈夫か!?」

「……ちゃんと生きてるぜ?今は、な」

「な……!? てめぇ、何する気だ!?」

「フッフッフ……言っただろう。落とし前をつける」

「なにぃっ!?」





こいつは、突如現れた。

俺が駆けつけた時には、すでにナミさんは捕らえられ、意識を失っていた。

もちろん夢中で助け出そうとしたが、まるで歯が立たない。

聞けばこいつは七武海。

元部下を可愛がられた落とし前をつけにきたと抜かしやがった。

もちろん、そんな奴に心当たりはない。

そりゃそうだ。

そんなのいちいち覚えてられねぇ。

この状況から察するに、俺はナミさんを助けるばかりか、情けなくも一緒に捕らえられたようだ。

最悪だ。


「ナミさんに手ぇ出すんじゃねぇ……!」

「ほお……守れるか? お前に」


まぁ、正論だ。

今動く事もままならない俺に何ができる。

だが、命に代えても守ってみせるさ。

それが、ラブコックたる由縁だ。

俺は愛の為なら命すら惜しくねぇ。


「俺に何しても構わねぇ……。だから、ナミさんには手ぇ出すんじゃねぇっ!」


そのピンク野郎は喉の奥で笑うと、俺に近づいてきた。


「そうか……。ならこいつを咥えてもらおう」

「!?」


ピンク野郎は俺の目の前に信じられないものを突き出してきた。

そしてその途端、俺の体は解放された。


「てめっ……!ふざけてんじゃ…」

「おっと」


起き上がった瞬間、俺の体はまた動かなくなる。

一体何だ。

力を込めると、さらにそれは体を絞めつける。


「女が好きなんだろ? 安心しろ。俺だってそうだ」

「くっ……! 何がしてぇ!?」

「別に……暇つぶしだ。それにお前には、一番こたえる仕打ちだろ?」


こいつはよほど一味を恨んでると見た。

まったく正気の沙汰とは思えない。

しかし、次の瞬間、俺は従わざるを得なくなった。

この男が指を軽く曲げただけで、愛しのナミさんの体はまるで磔にされたように宙に浮いた。


「じゃあ、この女にやってもらうとするか……」

「……やめろっ!! てめっ……!」


俺は体をじたばたさせたが、やはり思うようには動けない。

悔しそうな俺を満足気に見つめると、その男は髪の毛を鷲掴みにした。


「奥まで咥えろよ……」

「!」


その時、俺の口腔におぞましいものが突っ込まれた。

俺は吐き気をもよおすが、そんな事はお構いなしに一気に喉奥までそれは入り込んできた。


「フッ……そうだ。うまいぞ」

「……!」


俺の喉は何度も押し戻そうとえずくが、それは出し入れされると次第に質量を増していった。


「う……ぐ……!」

「はははっ! 面白ぇっ!! てめぇみたいな女好きが俺のもんをしゃぶってるとは!!」


俺の気分は人生で一番最悪だった。

しかし、もしナミさんがこんな目に遭う事を考えると、まさに背筋が凍りつくような気分だ。

男は、すっかり硬く勃ち上がったものを引き抜いた。


「ごほっ! ……ぐっ……!」

「フッフッフ……てめぇみたいな甘ちゃんは、犯した事も犯された事もねぇんだろうなぁ?」

「!?」


ニヤついた笑いを途切らせる事なく、男の指は忙しく動いた。

その途端、俺の体は誰にも触れられていないのに、まるで引き寄せられるかのようにして後ろに倒れた。

男は覆い被さると、俺の一張羅を引き剥がしにかかった。

野郎なんかに一生触らせる事のなかったはずの体に、男の舌が這いずり回る。

まるで無数の虫が蠢くような感覚に、俺の肌は一気に粟立った。


「う……! や……めろ……!」


耐えられない屈辱と気味の悪さに、俺の精神は限界だった。

しかし、男は執拗に俺の体を弄る。

そして、下腹部に手を伸ばすと、すっかり萎えきった俺のものを掴んだ。


「……っ!」


やめろ、と声に出したかったが、それは叶わなかった。

男が強引に舌で舐め回し始めたからだ。


「くっ……!」


男は心と体が別だというが、本当なのだろうか。

俺は次第にぞくぞくと這い上がってくる感覚に戸惑った。


「フッフ……なんだ? 女好きじゃねぇのか?」

「う……」


男は、兆しを見せた俺のものを握ると、今度はじゅるじゅると音を立てながらしゃぶり始めた。

俺の頭の中で、しばらく海の上だったからな、とか、久々の島で美女相手に撒き散らす予定だったんだよ、とか、言い訳のような思いが幾つも巡る。

そんな事を考えねばならないほどに、俺の性感は追い立てられていた。



「ふっ……くぅ……」

「気持ちいいか?フッ……」


さぞ情けない顔をしてるんだろうな、俺は。

男は一旦顔を上げると、今度は自分の指をしゃぶり始めた。


「処女だからなぁ……。きちんとほぐしてやる」

「! やめろ……!」


しかし、その叫びはもちろん聞き入れてはもらえず、男の指は俺の窄まりに突っ込まれた。


「ぅあぁーっ!!」


体を突き抜ける初めての痛みが俺を襲う。

今まで死に目に遭った事は何度もある。

しかし、こんな屈辱的な痛みがあるだろうか。

男の指は容赦なくズブズブと差し込まれた。


「やめろ……! や……め……!」


なんて情けない声だ。

自分と言う人間が信じられない。

拒絶する心とは裏腹に、体は見事に反応している。

男は、空いている手で俺の勃ち上がったものを再び握ると、軽く扱き出した。


「あっ……クソ……よせ……!  くぅっ……!」

「フフ……面白ぇ……」


まるで面白い玩具に夢中になるように、男の両手は休む事をしらない。


「あぁ……う……」


しばらく単調に出し入れされていた男の指がふと、俺の中でヒクついてる箇所を押し上げた。

すると、まるで電撃に貫かれたような快感が包み、俺は背を仰け反らせた。


「あぁぁっ……!!」

「フ……ここ、か」


男の指はもう一本追加され、先ほどの箇所を何度も何度も擦り上げる。


「はっ……! あぁっ……!」


こんな自分を俺は知らない。

いつもレディを感じさせるのが俺の使命だ。

いっそ俺はイカなくても構わない。

だが。


「ふっ……あっ……うぅっ……」


今、男に犯されている俺はもう限界まで張り詰めて、勃ち上がっている先端からは、まるで涙のように透明の雫がポロポロと滴り落ちている。


「だめだ……! ほんと……に! ……やめ……ろ……!」

「フフフ……」


切羽詰った声を出す俺に構わず、男は指の動きを速めると共に、再度しゃぶりついてきた。


「……!」


俺は無意識に腰が浮いた。

だめだ。

それだけは。

それだけは、プライドが許さねぇ。


「あぁっ……! よせ……! くふっ……!」


男は奥まで咥え込むと、それを喉の奥で絞めてきた。


「う! あぁっ……! だめだっ……!! あぁっ!」


指は何度も何度も弱い所を擦ってくる。

もう俺は何にも考えられなくなった。

次の瞬間、張り詰めていたものが弾けた。

それは、表現ではなく、実際に。

男の口腔に俺の熱い奔流が迸り、俺は心にそうしたように、体も解き放ってやった。

男は白濁した液体を適当に吐き出すと、さらにニヤリとしながら俺を四つん這いにさせた。


「……」


俺はもう特に抵抗も喚きもしなかった。

なんせ、この男のものを咥え込んだ時からある程度の結末は見えている。

ただ、予想を大きく反したのは自分の心に渦巻く気持ちだった。


「ぐ……あぁぁぁっ!」


ほんの少しの痛みの後には、抗う事のできない快感が俺の体を支配する。

役目を終えたと思われた股間が再度熱くなるのを感じ、俺は自分が自然と喘いでいるのにぎょっとした。


「あぁっ……あっ!  うぅぅ……は……あぁっ!」

「いい声出すじゃねぇか……」


男の律動は次第に速く深くなる。

俺は時折顔を反りながら、途方も無い快楽に身を任せた。

すっかり自分のものが硬く勃ち上がっているのを確認すると、来たる絶頂の波に備えて、俺は体に力を入れた。


「……うっ!」


しかし、先にイッたのは奴の方だった。

俺の体内に熱いものが一気に雪崩れ込む。

これでやっと解放されるのだろうか。

俺は安堵の気持ちの影に隠れる、もう一つの思いを打ち消した。

しかし、奴は俺を仰向けにさせると、すぐに馬乗りになった。


「舐めろ……綺麗にな」

「……」


俺は呆然としながらも大人しく従った。

すでに誰の体液のせいかもわからないそれを舌で丁寧に舐めとる。


「……だいぶ、エロい面になったな」


こいつがそう言うならそうなんだろう。

そんな自分をもう否定する事はできない。

それがすっかり綺麗になる頃には、奴のものは再び硬く質量を増していた。

奴は予想通り俺の脚を開かせ持ち上げた。

いわゆる何とか返しというヤツだが、その名称は俺には当てはまらないだろう。

自分のものを、すっかりほぐされた俺の窄まりにあてがうと、ズブズブと沈めた。

俺の孔はきっと旨そうに咥え込んでいる事だろう。

それは這い上がってくる圧倒的な快感によって容易く想像できた。


「あっ……はっ……! んん……うっ……」


男はよほどこの暇潰しが気に入ったようだ。

ニヤついた顔で絶えず俺を舐め回すように見下ろす。

俺に先ほどの波がまた近づいてくると、男は突然動きを止めた。


「……!?」

「イきたいなら自分で動いてみろ……」


そう言うと、俺の体は勝手に起こされた。

奴の上に跨る形になり、反対に奴は寝そべった。


「く……あ……はっ……あ……!」


もちろん俺は夢中で腰を振った。

この快楽に止まってなんかいられない。

さっきから体の芯がじくじくと疼いていて、そこを思い切り抉ってやりたかった。

俺は一体どうなるんだ。

今までの俺は、いなくなるのかもしれない。

体だけだと思っていたら、いつの間にか心の奥底まで喜悦に溺れている自分がいる。


「あぁっ! ……うっ……くぅ……あ……!」

「上手いじゃねぇか。本当に初めてか? フフ……」


男はそう言うと俺を簡単に押し倒し、脚を抱え込んだ。

先ほどまでとは打って変わった激しい動きに、俺の意識は何度か飛びかけた。


「あぁっ!  あ、あ、イ……ク……!」


俺の熱い奔流は一瞬宙を舞い、自分の腹や胸の辺りを汚した。

そして息をつく間もなく、男はとろりとした白濁をその上へと撒き散らした。

俺の体といわず、顔といわず、それは俺の心の隅に至るまで汚していった。


「フッ……! はーはっはっ! ……もうお前は女を抱くだけじゃ満足できねぇだろうよ!」


まだとろんとした目を向けている俺を満足気に見下ろすと、男はくるりと背を向けた。

そして合図するように指をくいっと曲げると、磔のままだったナミさんの体をどさり、と床に落とした。


「いい味だったぜ……。『黒足のサンジ』」


まるでレディに対して言うようなセリフを吐き捨てると、男はサングラスをかけ、部屋を出て行った。









「七武海!? ……マジかっ!?」

「えぇ……」

「お前ら、よく無事だったなぁっ!!」

「……」


無事、か。

確かに命はある。

傷だって大した事はねぇ。

しかし。


「なんか……サンジ暗くねぇか……?」

「あぁ……暗いというか……薄いというか……」

「心なしか、飯の味も薄いような……」

「……」


ナミはちらとサンジを見ると、断片的な記憶を辿った。

はっきりと見た訳ではない。

しかし、あの時の声だけは、確かに耳に残っていた。

サンジに何度も声をかけようとして、はっとしては、座り込む。

こんな活力のないサンジは見た事がない。

しかしこれが、曖昧な記憶を確信へと導いているようだった。

だとしたら、自分にできる事はただ一つ。

彼を、以前の彼に少しでも近づけられればいい。

もしかしたらそれは、もっと深く傷つける事になるかもしれないけれど。

ナミは決心を固く抱いて、サンジに近づいた。
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