Butterfly

□Last−After
8ページ/11ページ


「お前ら! 頼むから安静にしてろよ!!」

「あぁ……」

「ありがとう、チョッパ―」


ゾロとレインは医療室にいた。

いや、少しキレ気味のチョッパ―に呼び付けられていた。

しかし、治療を終えるとすぐに、チョッパ―は慌ただしく出て行った。

どうやら、他のメンバ―の治療も行うらしい。

ゾロはベッドに腰を下ろし、大きく息をついた。


「おい……。甘いってどういう事だ?」


ゾロは厳しい目付きで言ったにも関わらず、レインは笑って答えた。


「……そんな事言ったか?」

「あ? なめてんのか!? てめっ……」


ゾロはレインに食って掛かろうとしたが、それは途中で止まった。

レインがゾロにしがみ付いてきたからだ。


「ゾロ……」

「……なんだ? 誤魔化してんじゃねぇぞ、おい」


ゾロの口調は不機嫌そうだったが、腕はレインを優しく抱き留めていた。


「俺は……まだまだ強くなる」

「知ってる……。今でも十分強い」

「甘いんだろ?」

「……だから、好きだ」

「……」


二人はしばし見つめあった後、初めて交わすようにそっと唇を重ねた。

お互いの存在を確かめるようなキスだったが、次第に止めどなく深くなる。

ゾロが耳朶を噛み首筋を愛撫すると、レインは少し仰け反りながら囁いた。


「だめだゾロ……。傷に障る……」

「……じゃあ、お前が握ってんは何なんだ?」


レインは兆しを見せ始めていたゾロのものに手を伸ばしていた。

二人は再度見つめあい、もう一度唇を合わそうと顔を寄せた。

その時、外からバタバタと迫る足音が聞こえたかと思うと、医療室のドアは突如開かれた。


「おい、レイン!! ……おわっと!!」


慌てて入ってきたウソップが、寄り添う二人の姿を見て更に慌てた。


「騒々しいな……後にしろ」

「……いや、お前らが後にしろ! レイン! お前に客だ!!」


その言葉に、二人は体を離した。


「……客?」

「敵じゃなくて?」






二人がデッキに出ると、すでに皆は集まっていた。

その中央に懐かしい人物を見つけ、レインは途端に目を輝かせる。


「……スタンレ―!」

「レイン様!!」

「こらっ! 私もおるわっ!!」

「……あれ? 叔父様?」


見ると、一味の船に寄せているのは、マスタ国の船であった。


「レイン様が新世界に行かれたと聞いて、私はいてもたってもいられなかったのですが……ビリア様が『私はあんな恐ろしい海には行きとうない!』とおっしゃって……ブツブツ……」

「何を言うとるかっ!! 結局船を出してやったのは誰だと思っとる!? ……まったく、ただの一国の兵士の分際でこいつは……ブツブツ……」

「まぁ、新世界から戻ってこられたと聞いて、やっと勇気を振り絞り、しぶしぶ船を出して下さったのです!」

「一言二言多いわっ!」

「……」


(……こんなに仲が良かっただろうか)


レインは笑いながらも、久しぶりに元気そうな二人の姿を見れて嬉しくなった。


「……それで、大丈夫だったのか?」

「手配書の事ですね……。それが、私も驚いたのですが、政府からは特に何も……」

「……」


(やはり、思った通りだ)


あの島でスモ―カ―に会って、レインは確信していた。

政府の狙いはこの剣のみ。

つまり、剣さえ手に入れば自分や関係者の命などどうでもいいのだろう。


「……スタンレ―、この剣を作った者は生きているのか?」

「え……?」

「私は、この剣を処分する」

「!」


スタンレ―は驚いていた。

無理もない。

剣の力はどうあれ、これは代々受け継がれてきた物なのだ。

そして、父の形見でもある。


「……レイン様」

「わかっている。だが、他の者の手に渡る可能性がある限り、この剣は存在してはならない物……」

「……」


スタンレ―は少し考えた後、静かに口を開いた。


「その者の子孫が、鍛冶が盛んな島にいると聞いた事があります。……しかし、また違う航路を逆流する事になりますが……」

「そうか! では、すぐに向かおう!」

「……」


レインは目を輝かせたが、その時、ゾロの視線に気が付いた。


「っ……」

「……レイン様?」

「あ……いや」

「お前ら、ちょっと待て〜いっ!! この船でどうやってそこまで行くと言うのだ!?」


嫌味な宝飾が無駄に施されているはずのマスタの船は、よく見るとつぎはぎだらけだ。


「ここに来るまで海賊に襲われたり、嵐に見舞われたり……もうこの船は限界じゃあ―っ!!」


自慢の船がぼろぼろになり、ビリアは今にも泣き出しそうだ。


「おっさん達、ここまでよく辿り着いたなぁ!」

「ホント……。すごいな、コレ」

「おいおいおい! そういう事なら俺に任せな!!」


そこに、フランキ―が道具を抱えてやってきた。


「あ! そうか。フランキ―に直してもらえよ!! 船大工なんだ!」

「え! 本当ですか!?」

「ス―パ―任せろ! まぁ……かかって半日。明日には出航できるだろ」

「そっか! じゃあ、今夜はウチの船に来て一緒に飯食えよ!!」


(明日……)


皆が盛り上がってる中、レインはゾロを振り返ったが、その姿は消え去った後だった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ