Butterfly

□Last−After
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「……なんだ? やけに騒がしいな……」


ゾロが宿の外に出ようとすると、突如、白い煙に視界を遮られた。


「!?」

「……やはり、ここか」

「なっ……!? 海軍!?」

「ロロノア! 覚悟なさい!」

「げっ! また出やがった!」


ゾロはたしぎの刀を咄嗟に受け止めた。


「ベアトリー・レインはどこにいる!?」


二人が刀を合わせている隙に、スモ―カ―は白煙となって宿の中に滑り込んだ。


「この……! 待て!!」

「あなたの相手はこっちよ!!」

「クソッ……!」





宿はちょうど清掃中で、各部屋のドアが開かれていた。

しかし、一つだけ閉ざされていた部屋があり、そこにスモ―カ―は飛び込んだ。


「ここか……!」


そこは、人の気配がないほど静かだった。

まるで病院の一室のようなその部屋の白いベッドの上に、レインはいた。


「……!」


相変わらず蒼白い顔で寝そべるレインに、スモ―カ―は息を呑んで近づいた。


「レイン……」


長い睫毛の下には影を落とし、死人のように動かぬレインにそっと手を伸ばす。

しかし、その時後方から突如斬られ、スモ―カ―は瞬時に煙と化した。


「!」

「さわんじゃねぇ……」

「……生きてるのか?」

「一応な……七武海のピンク野郎にやられた。……政府も暇だよなぁ? おい!」

「!」

(七武海……この町で先日ドフラミンゴの姿を見かけたと報告があったが……まさか!?)


ゾロは怒りを露わにして刀を構えている。


「……無駄だ。お前に俺は斬れねぇ。この女は連れて行く!」

「――では、これではどうだ?」

「!」


その時、寝ていたはずのレインが、スモ―カ―の脇腹を剣の柄で殴った。


「ぐ……! この俺を……覇気か!?」


スモ―カ―は堪らず体を折り曲げ、苦しげに呻いた。


「その……剣を渡せ……! お前の事は……悪いようにはしない……ッ!」


レインはベッドから下り、スモ―カ―に顔を近づけた。


「海賊も政府も求める物は皆同じ……。なぜだ? 政府が善で海賊が悪と言うのならば、この剣を政府が悪用しないという証拠を差し出せ!!」

「な……に!?」

「そうすればこの剣はいつでもくれてやる……」


その時、ドアの方から大勢の足音が迫ってくるのが聞こえた。


「それができないなら、これは絶対に渡さない!!」

「!」


レインは壁に向かって素早く剣を二度振るった。

すると、そこに山型の切れ目が入った。


「ロロノア! ここね!?」

「! ……行くぞ!!」


ゾロはレインの腰の辺りに腕を回し、そのまま担ぐように壁に向かった。


「待て! 貴様等……!!」

「スモ―カ―さん……!?」


ゾロが切れ目に刀の柄をぶつけると、その壁は山型に倒れ、外の眩い光が一気に差し込む。


「待て!! ロロノア……!!」


レインはゾロに抱えられたまま、最後に剣を振った。

すると、先ほどの切れ目からその部屋は崩れ、同じ所から追おうとしていた海兵達は見事に瓦礫の下敷きとなった。


「きゃあぁぁ―ッ!!」

「くっそ……ッ!!」







「なんだ今の音……あ! お前ら!!」


その時、宿に向かっていた仲間と鉢合わせた。


「船に戻るぞ!! 早く来い!!」

「……」


ゾロはレインの傷をちらと見た。

背中からじわりと血が滲んでいる。

どうやらまた傷が開いたようだ。


「……ったく、無茶しやがって!」

「……たしぎに、恨まれてるようだな」

「あぁ? 知らねぇぞ!? んなもん!」

「お前が女を斬らないからだ……。そういう所が……甘い……」

「てめっ! 勝手な事言ってんじゃ……おい!?」


レインはゾロに抱えられたまま意識を失っていた。
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