Butterfly
□Last−After
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「――レインは……?」
「傷の処置は全部済んだけど……まだ意識が戻らないな……。体見た限りだと……多分、相当疲れてたんだと思う」
「……!」
「そうよね……新世界から一人で……。しかも、常に危険に身を置いていたんだと思うし……」
「……」
「あ! ゾロ! 包帯取るなよ? お前だって怪我人なんだ!」
「……あぁ」
ゾロは部屋の一室へと向かった。
レインが動かせない状態の為、宿の一室を借り、そこで処置せざるを得なかったのだ。
ドアを開けると、静かな空間にレインは一人で眠っていた。
その顔はまるで死人のように蒼白い。
「……」
ゾロは温もりを確かめるように、そっと頬に触れた。
その体温が手に伝わると少し心が落ち着いていくのを感じる。
しかし、小さく息をついたゾロの視界の隅に、不意に赤いものが飛び込んできた。
それは、あの時ドフラミンゴがつけた口付けの跡だった。
ゾロは、居た堪れない気持ちになり、目を固く閉じた。
「……すまねぇ」
自分は未熟だ。
腕だけじゃなく、心まで。
ただ、強くなりたかった。
それは、四皇よりも、七武海よりも。
強くなければこいつを受け止められないと思った。
しかし、それは単純に自分の我が侭だったのかもしれない。
いや、我が侭とは少し違うか。
多分、子供っぽい嫉妬だ。
「……」
ゾロはそっとドアを閉めると、部屋を後にした。
それから三日が経ったが、レインは目を覚まさなかった。
皆は町に買出しに出て、宿に戻る途中だった。
「傷はちょっとずつ治ってきてるからな……。あとは、意識を取り戻せばいいんだけど……」
「そうね……。とにかく、今は寝かせてあげましょ? きっと、長い事ゆっくり眠れてないんじゃないかしら……」
「ゾロは?」
「まだ寝てたみてぇだが……」
サンジはそう言いながらも、ゾロはレインの傍にいるのではないかと考えていた。
その時、後方を歩いていたウソップ達の大きな叫び声が聞こえた。
「!」
「おい! どうした!?」
「海軍だ! あいつら、いきなり撃ってきやがった!!」
「なにぃ!?」
少し離れた所から、海兵の群れがバタバタと追いかけて来るのが見える。
先ほどまでいた民間人は性急に避難させられていたようだ。
今、一味と海軍を阻むものはない。
「やべぇ! レインを連れて船に戻るぞ!!」
「でも、船は大丈夫なのか!?」
「フランキ―がいるはずだっ!!!」
「では、私も先に船に向かいます!!」
「二手に分かれるぞ!!」
宿に戻る者と、港に向かう者で、一味は二手に分かれた。