Butterfly

□Last−After
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「う……ッゾロ……来るな……。七武海ッだ……!」

「なに!?」

「麦わらの一味だな……。三本の刀……『海賊狩り』か!」

「!?」


ドフラミンゴが手を振り下ろした瞬間、なぜか離れた所にいるゾロの肩や脚が切れた。


「ぐわ……!」

「フフ……!」


(なんだ!? 能力者か……!?)


「動かない方がいいぜ……。お前はもう囲まれた!」

「!?」


いつの間にかゾロの周りには、見えない何かが張り巡らされているようだ。

恐らく、触れれば今のように身が切れるのだろう。


(なんだこいつの能力は……!?)


「さて……」


ドフラミンゴはまるで楽器を奏でるように、指を曲げたり伸ばしたりした。


「あ……!」

「!?」


すると、レインの体は自由を失い、力無い人形のように、再び木に押し付けられた。

剣で裂かれたドレスはひらひらと体をなぞり、緩やかな風に頼りなく舞い続ける。


「モテる女はさぞ大変だろうな……」

「!」


ドフラミンゴはレインに強引に口付け、舌を捻じ込んだ。


「んん……ッ!」

「なっ!?」


苦しげなレインとゾロを交互に見ると、ドフラミンゴは喉の奥で笑った。


「てめぇ……!!」


ゾロは咄嗟に前に出ようとして、体の至る所から血を吹き出させた。


「う……!」

「ゾロ……ダメ……!」

「フッフッフ……余裕だな。人の心配か?」


ドフラミンゴは、じっくりと味わうようにレインの体に舌を這わしては、赤い跡をつけた。


「……ッ!」


レインは自分がされる事よりも、ゾロの心情を思い、震えながら涙を流した。


「レイン……!」

「フフ……どうした? さっきとは別人のようだな……。もっと俺を楽しませろ!」


ドフラミンゴは指を動かし、触れずにレインの脚を開かせた。


「!」

(さっきから見てりゃ……もしや、こいつの能力は……!)


「うおおッ!」

「!」


ゾロは血が吹き出るのも構わず、三本の刀を振った。

しかし、その飛ぶ斬撃はドフラミンゴをほんの少し掠めただけで、レインの頭上へと命中した。


「ふん……とんだ的外れだな!」


その時、レインの背後にある木は薙ぎ倒され、レインも共に大地に崩れた。


「!?」


そして、ゾロの周りにあった木は一本残らず倒されていた。


「ふぅ―……。『糸』ってのはよぉ、張り巡らす為には何かに引っ掛けないとまずいんじゃねぇか?」

「……」

「ゾロ……」


二人の自由を縛っていたものは、なくなった。


「おい、ピンク野郎!! てめぇは剣士じゃねぇが、特別に俺が相手してやる……。ありがたく思え!!」

「フ……なるほど。面白ぇ! ……だが、だいぶフラフラのようだな」

「……!」


レインの脳裏に、ナミの言葉が浮かんだ。

ゾロはまだ戦闘なんかできる体ではないはずだ。


「守れるか? この女を……」

「うるせぇっ!!」


ゾロは激しく斬りかかった。

しかし、刀はドフラミンゴの眼前で、三本とも動きを止めた。


「!?」

「フッフ……無力無力……。力がない奴は女一人守れねぇ……!」


ドフラミンゴが全ての指を伸ばすと、ゾロは突然吹き飛ばされた。


「ぐわっ!!」

(クソっ……! また糸か!?)


「自分の刀に斬られた事はあるか?」

「!?」


ゾロの刀は三本ともふわりと宙に浮き、その鋭い切っ先をゾロへ向け、襲いかかってきた。


「うおっ!?」


ゾロは身を捩り、なんとか避けると、刀は大地に吸い込まれるように突き刺さった。

しかし、最後の一本だけはドフラミンゴの手によって、当たる直前に変則的な動きへと変えられた。


「ぐっ……!!」


それはゾロの肩に深々と刺さり、その身を抉った。


「ゾロ……!」

「フッフッフ……」


ドフラミンゴはレインに目を移すと、何かを呼び寄せるように指を折り曲げた。

すると、レインの剣は宙を舞った挙句にドフラミンゴの手へと綺麗に収まった。


「……!」

「まぁ良さそうな剣だが……今はただの剣のようだな」


この冷酷な男の手に渡ったらどうなるのか。

恐らく、政府に渡す気などさらさらないだろう。

レインは、ぞっとした。


「やめろ……! それに触るな!!」

「安心しろ……今日は『見学』だと言っただろ? 少し切れ味を見てみてぇだけだ……!!」

「!」


その剣は一本の矢のように、ゾロに向かって放たれた。

ゾロは一瞬反応が遅れた。

蓄積されたダメ―ジで、思ったよりも体が動いてくれなかったのだ。


(しまった……!!)


次の瞬間、どん、という衝撃にゾロは目を剥いた。

その衝撃は痛みではなく、とても温かいものが飛び込んできた為であったからだ。


「……ッ!」

「……おい!!」


剣が突き立てたのは、ゾロではなく、レインの体だった。

途端に、レインの背中から止めどない血が溢れ出してくる。


「フッフッフ……! お前らは面白ぇ! だが、そろそろお開きだな……」

「なっ!? 待て!! てめぇっ!!」


ゾロは苦し紛れに斬撃を放ったが、それはひらりとかわされた。


「また遊んでやるさ……。その時まで、生きてたらな!!」


ドフラミンゴはそう言うと、いやらしい笑いを残し、どこへともなく姿を消した。


「……おい! しっかりしろ!!」

「ッ……ゾロ……私は……守ってもらいたくなど……ッない……」

「何言ってやがる!? もう喋んじゃねぇ!!」

「共に戦えれば……傍にいれれば……それで……」

「……おい!?」


レインは、そこで意識を失った。
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