Butterfly
□Last−After
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「ねぇレイン? 島に着いたらショッピングでも行かない?」
「いや……。鍛冶屋に行こうと思ってる」
「鍛冶屋?」
「……この剣を処分できないかと思ってな」
レインはそう言うと剣をちらと見た。
「この剣……どうしたって折れも曲がりもしない。火にくべても氷漬けにしてもダメだった。……まったく困り果ててな」
「……処分するの?」
「あぁ。以前のようなおかしな力はもうないが、これから先どうなるともわからないからな」
「そう……」
レインがそう言った後少し遠くを見つめたので、ナミは話題を変える事にした。
「そういえば、その服素敵よね! すごく似合ってる!」
レインは例の黒いドレスに身を纏っていた。
「そうか? 実は今着てるので三代目だがな……」
「え?」
「ふふっなんでもない」
ここに辿り着くまで、何度も破れては同じ物を探した。
やはり、この服は戦闘には向かないらしい。
「……」
また破れる前にゾロにも感想を聞きたいところだったが、相変わらず眠っているようだ。
きっといつも通り、このまま船番を押し付けられるのだろう。
島に着くと、一味は思い思いに町へ繰り出した。
一番最後にレインが船を降りる時確認すると、やはりゾロは眠ったままだった。
「……」
その寝顔をちらと見ると、レインは鍛冶屋へと向かった。
正直、昨夜のゾロの態度はショックだった。
自分がふらふらしていた事がよくないのはわかっている。
しかし、あの頃の自分を保つ為には必要な事だった。
「だからね、お嬢さん……聞いてるかい?」
「あ……悪い。で?」
「で? じゃないよ。この剣は無理だ。ウチでは処分できないよ」
「そうか……」
がっくりと項垂れたレインを見て、その店主は言葉を続けた。
「その剣の硬度はダイヤ以上……。海楼石とはまた違うが。しかし……どこで手に入れたんだい? こんな代物、滅多にお目にかかれないよ!」
「……」
「まぁ……どうしても処分したいと言うのなら、その剣を作った職人に頼みな! ……生きてれば、の話だがね」
レインは大きく溜め息をついた。
そんな人間、生きているはずがない。
(しかし……国に戻れば何かわかるかもしれないな)
レインは町から少し離れ、小さな森へと入った。
新世界を逆流してからというもの、あんなに毎日追われていた日々が嘘のようだ。
町の喧騒が遠のいたこの場所で、久しぶりの心地よい静けさを一人で堪能する事にした。
木漏れ日が差し込み、涼やかな風が鼻をくすぐる。
レインは大きく息を吸い込もうとしたが、しかし、それは途中で止まった。
突如、その情景を掻き消すような異様な気配が周囲を包んだからだ。
「……誰だ?」
レインは剣に手をかけた。
「ほう……それが例の剣だな。ベアトリー・レイン……」
「!?」
その声は、木の上から聞こえた。
咄嗟に剣を抜こうとしたレインは、すぐに体に激しい違和感を感じ動けなくなった。
「……うっ!」
微動だにできないまま、まるで張り付けられるように木にぶつかった。
見えない何かに縛られているようだ。
それは、レインの喉元をやんわりと絞め付け始める。
「……く……ぅ!」
「フフ……麦わらの一味をひと目見ておこうと思っただけなんだけどなぁ。まさか、噂の女に会えるとは……」
「お……前は……ッ!?」
それはまるで鳥のように木の上から舞い降りた。
ピンクの羽毛に身を包んだ派手な男は、サングラス越しに、蛇のような視線を絡ませてくる。
「俺はドンキホ―テ・ドフラミンゴ……。『七武海』、といえばわかるな?」
(七武海……!? ミホ―クと……同じ!?)