Butterfly
□Last−After
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レインはナミと共に医療室にいた。
「ほら! これでいいぞ!」
「あれ……動きにくくない」
「あれから色々研究したんだ! レインだけじゃなく、ゾロもすぐ包帯取るから……あっ!」
不用意な名前を言ったと思ったチョッパ―は慌てて口を塞いだが、レインは微笑んだ。
「……そうか。ありがとう、チョッパ―」
「お、お礼なんて言われても、嬉しくないぞ! コノヤロ―!」
何気に顔が緩んでいるチョッパ―をそのままに、ナミは少し真面目な顔で言った。
「レイン……そのゾロの事なんだけど……。一つ前の島で、命を落とすほどの大怪我をしたの。きっと未だに調子が出ないから不機嫌なのよ! だから……」
「そうか。……ありがとう、ナミ。私なら気にしてないから」
「そう……? ならいいけど……」
自分に気を遣ってくれる二人の気持ちが嬉しくて、レインは再度微笑んだ。
「……」
ゾロは、以前レインがよくそうしていたように、海を眺めていた。
あれ以来変に習慣づいてしまったようだ。
気が付くと一人でよくここにいる。
しかし、その時背後に微かな気配を感じ、振り返った。
「海を、見てるのか……?」
「……」
レインだった。
昔はよく二人で海を眺めていた。
ゾロの脳裏に突如甘い記憶が掠める。
並んで海を眺める二人の姿はきっと、昔と何も変わらないはずだ。
だが、互いに身を寄せ合うには、あまりにも心が遠く離れているような気がした。
「ゾロ……」
レインは、潤んだ瞳で真っ直ぐ見つめると、ゾロの胸にそっと飛び込んだ。
懐かしい香りと感触がゾロを包む。
「……やめろ」
しかし、ゾロは体を離し、顔を背けた。
その表情は、受け入れたくも拒絶するような、そんな苦悩の色が滲み出ていた。
「ゾロ……! 私は……」
「『赤髪』なら、優しく抱き締めてくれたか……?」
「……ッ!」
「それとも、『鷹の目』の方だったか? ……まぁ、他にも色々いるよな」
ゆっくりと開かれたゾロの瞳は、冷たい光を放っていた。
「……」
「放せ」
そう言うと、ゾロは背を向け、足早に立ち去った。
「ゾロ……」
船内に入ると、すぐにトレ―ニングル―ムへと向かった。
まだ体は痛んだが、そんな事は言ってられない。
自分には強くならなければならない理由がある。
そんな事を考えていると、突然後ろから声をかけられた。
「おい……男の嫉妬はみっともねぇぜ?」
「……!」
コックだ。
こいつはいつも嫌なタイミングで現れる。
「てか、お前……逆に俺の事好きなんじゃねぇか?」
「……あぁ!? 何言ってやがんだってめぇ!? 頭おかしいんじゃねぇのかクソ野郎っ!!」
突然の思いがけない言葉に顔を赤くして喚き散らすコックを尻目に、ゾロはトレ―ニングル―ムへと入っていった。