Butterfly
□After-After
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二人は着替えを済ますと、誰もいない船内で電伝虫を探した。
ヒナの部隊に連絡を取る為だ。
そして、その際にレインは付属している小さな船を見つけ荷物を積み込んだ。
「……ねぇ、このままじゃ嫌だわ! ヒナ不服よ!」
ヒナは、いつもの口癖が出るほど落ち着きを取り戻していた。
「ん……? 別れが惜しくなったか?」
「……違う! あなたなんかに借りを作った事がよ!」
「……」
「もちろん、私はあなたを追い続けるし、次に会った時は容赦しないわ! でも……」
ヒナはイラつきながら顔を背けたが、いわんとしている事がレインには伝わった。
「……」
レインは少し沈黙した後、静かに口を開いた。
「では、一つ聞きたい事がある……」
「おい、ヒナ……。本当に奴には逃げられたのか?」
「えぇ、それがなぁに?」
「いや……」
近くまで追ってきていたスモ―カ―の部隊は、ヒナを自分の軍艦まで送り届ける事になった。
しかし、スモ―カ―はわからない事だらけの状況に頭を抱えていた。
海賊船の中は悲惨なもので、すべて剣による攻撃だというのは明らかだ。
しかも気持ちがいいほどの皆殺しで、ヒナは一人も捕まえてはいない。
そして一番わからないのが、ヒナが身につけているのは間違いなく、最後に見たレインが着ていた物と同じだという事だ。
だが、いつもと様子が違うヒナには、なぜか詳しくは聞けなかった。
「……男にはわからなくていいのよ」
「あ? ……なんだって?」
ヒナは、レインが最後に言った言葉を思い出した。
自分も、男には絶対汚されるものか、と思って生きていると。
「……それに、焦らなくても行き先はわかってる」
「なに!? それじゃすぐに……!」
追おうとするスモ―カ―を、ヒナは手で制した。
「ねぇ、スモ―カ―君……。あなたはどうするつもりなの?」
「……どういう意味だ?」
「あの女は……本当に追う必要なんてあるのかしら……?」
「はぁ!? ヒナ……どうした!?」
スモ―カ―は驚いた。
ヒナは上官の命令にも嫌な顔一つしたことがない程の優等生だ。
やはり、あの船内で何かあったに違いない。
「時が来たら……処分すると」
「あ?」
「あの剣よ……。親の形見だから、自分の手で処分したいらしいわ。……剣がなくなったあの女を政府は……どうするのかしら?」
「……」
二人の間に何があったのかは知らないが、ベアトリー・レインという女に肩入れする奴は、どうやら男だけじゃないらしい。
スモ―カ―は海に視線を移すと煙を大きく吐き出した。
「やはり……厄介な女だよ、お前は」
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