Butterfly

□After-After
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その声を聞いた途端、部屋に何人もの男がなだれ込んできた。


「!!」


皆一斉にヒナの周りを取り囲み、興奮した様子で黒いス―ツに手を伸ばす。


「なッ!? ……やめなさい! やめてぇ―ッ!!」


しかし、そんな願いも虚しく衣服は乱暴に剥ぎ取られた。

カリブ―は奪ったヒナのコ―トを肩にかけ、楽しそうにその様子を見ていた。


「……い〜い格好だなぁ。女海兵さんよぉ〜! ケヒヒィ〜!」

「兄助! 俺ヤル! ヤル!」

「おぉ! その海兵さんを可愛がってやんなぁ〜! イカした者には分け前を倍額やるぜぇ!!」

「はえっ! はえっ!」

「きゃあっ!!」


ヒナの乳房に一人ずつ吸い付き、コリブ―は下腹部に顔を落とした。

荒々しい息を撒き散らし、乱暴に指や舌を動かす男共にヒナは吐き気を覚えた。


「うう……ッ!」


気味の悪さに顔を歪めるヒナを、レインは静かに見つめた。


「……」


しかし、その瞳にはヒナではなく、過去の自分が映っていたのだ。


「どうだぁ〜? いつもあんた達がバカにしてる海賊に犯されちゃう気分はぁ〜? これを録画して世界政府にばら撒けば、お前さんはクビだよぉ〜!! ケヒヒィ!」

「な……に……!?」


気が付くと、一人の男が電伝虫をヒナに向けている。

恐らく映像電伝虫の類だろう。

まったく趣味が悪い。

この趣味の悪さは、ある国の王を思い出させる。


「……」


レインの心に静かではあるが、確実に怒りが沸きあがってきた。

その手に自然と力が籠もる。



しばらく欲望に任せ、貪るように動いていた男達の指や舌の乱暴な動きが落ち着き、それは次第にねっとりとしたものに変わっていった。


「うぅっ……! ……はッ……あ……ッ!」


ヒナの呻きは、苦痛から少し艶のあるものへと変化し始めた。


(う……! 馬鹿な! この私が海賊なんかに……!)

「ケヘヘヘェェェ〜!! 感じちゃってるねぇ! もう少しだぁ!!」


その時、背に『正義』と書いてあるコ―トを身に纏い、しばらく遊んでいたカリブ―が動いた。

海楼石の手錠に間違っても触れないよう注意しながら後方に回り込むと、突如ヒナの両脚を持ち上げたのだ。


「!?」

「ケヒヒィ! これでどうだぁ〜っ!?」


カリブ―は、もう充分に湿っている熱いぬめりの中へ、己の欲望をズブリと突き立てた。


「いやッ!? ……いやあぁぁぁっ!!」

「おぉぉっ!! 締まってるぜぇぇっ!! 中ぬるぬるだぁぁぁ〜っ!!」


カリブ―が腰を突き上げる度にヒナの体は大きく跳ね上がり、その反動で熱く汚らしいモノが根元まで深く差し込まれた。


「あぁぁッ! ……いやっ! ……うぅ……!」


そして相変わらずヒナの体には数人の男がむしゃぶりついている。

こんな屈辱を受けながら反応する自分の体を、ヒナは呪った。

そして、女である自分の弱さを嘆いた。


「海賊なんかに……!! 男なんかに! ……ッ私は、汚されない!!」


ヒナは涙を流して懸命に声を振り絞った。


「……ッ!!」


その時、レインの心臓がどくん、と収縮した。

過去の悪夢が激しい怒りとなってレインの全身を急速に取り込み、拘束されている手に信じられない力を迸らせる。


「うぅ……!! うわあぁぁ―ッ!!」

「!!」

「なんだぁ〜っ!?」


手錠を通していた鉄パイプはグニャリと曲がり、その亀裂から妙な蒸気をしゅうしゅうと吹き出させた。

レインの手首からは血が滴ったが、先に根を上げたのは鉄パイプの方だった。

手錠の鎖の部分が食い込み、それはやがて耐え切れないようにぶつり、と切断された。


「ななななんだぁ〜!? おまいさん〜っ!?」


レインはヒナの方をちらと見ると、


「はぁ……初めて意見があったな……」


と言い、薄く笑った。


「え……?」


レインは繋がれたままの両手で剣を抜いた。


「私から剣を奪わなかったのがお前らの運の尽き……。海賊との噂に踊らされたな……!」

「!!」

「……ぎゃあぁぁぁ〜っ!!」

「あばぁぁぁぁッ!!!」


レインは目にも止まらぬ速さで、周りを囲んでいた男達を次々に斬り倒した。

それは無駄な動きが一切なく、華麗にワルツでも踊っているようだ。


「すごい……!」

(やはりこの女……! もはや、剣自体の力など関係ないんだわっ!)


血まみれになったレインが、コリブ―の眼前にその鋭い切っ先を差し出した。


「約束したな? 天国に連れて行くと……」

「はえッ!?」


ヒナの体に張り付いていた者達はカリブ―を除き、すべて細かい肉片へと瞬時に姿を変えた。


「や、野郎共ぉぉ〜っ!!」


レインはコリブ―の肉片から鍵を拾い上げ、自分の錠を解いた。


「行き先は天国じゃないかもしれないがな……」


そう言うと、顔に飛んだ血の飛沫をぺろりと舐め取り、レインは妖しく笑った。
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