Butterfly
□After-After
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「捕らえるか……。私を」
「『海軍』が『海賊』を捕らえるのは道理……。お前は俺の手で本部に連れていく」
「本部……?」
「そうだ……。お前は世間では何と言われてるか知らねぇが、政府が追っている理由はただ一つ! その剣だ!」
「!」
レインは自分の手にある剣をちらと見た。
「お前が国で大人しくしていればまだよかった。しかし、お前は一人で海に出た。その剣が悪党の手に渡ればどうなるか……わかるだろ?」
「……」
シャンクスとの噂は数ある中の一つ、という訳か。
この噂のせいで連日命を狙われるのかと思っていたが違うようだ。
確かにこの剣が悪党の手に渡り、例の力が発動してしまったら誰にも止められないかもしれない。
そしてその悪党は、悪しき力を使う事にほんの少しの躊躇いも感じないだろう。
レインは最悪の事態に思いを巡らせ、自分の賞金額に妙に納得した。
「……もちろん、名だたる海賊共と縁がある事も然り、だ」
スモ―カ―が眉をひそめながら付け足した。
「……まぁ、あの噂はあながち嘘でもないからな」
「なにぃ……!?」
表情を一変させたスモ―カ―を見て笑うと、レインは一瞬の隙をついて大地を斬るように剣を薙ぎ払った。
「!?」
辺りに土が舞い上がり、その砂嵐はスモ―カ―の視界を塞いだ。
「待て! レイン!!」
「!」
しかし、白煙と化したスモ―カ―はレインを追い、その体を捕らえた。
捕らえるというよりは、後ろから抱きすくめる感じかもしれない。
「……煙いよ」
「大人しくしろ……レイン」
「スモ―カ―……あなたと戦う理由がない……」
「では、戦うな。一緒に来い!」
まいったな。
戦うしかないのか。
レインが剣を手にかけたその時、スモ―カ―めがけ、小さな火の玉が無数に飛んできた。
「なに!?」
「!」
スモ―カ―はレインから飛び退き、二人の体は離れた。
「悪いな海軍……。そいつを連れて行くのはやめてもらおう」
「!」
辺りの温度がにわかに上がった気がした。
こんな芸当ができるのは、一人しかいない。
「……エ―ス!」
「ちゃんと生きてたな。レイン……」
赤々と火を立ち昇らせながら、エ―スはレインに近づいた。
「お前は白ひげのとこの……! なぜここにいる!?」
「たまたまさ……。もちろん、俺一人じゃねぇ」
「!」
(白ひげ海賊団が近くに……!?)
厄介な事になった。
自分の部隊だけじゃおおよそ太刀打ちできないだろう。
「……」
「もう一つ言っとくが、お前と俺の能力じゃ勝負はつかねぇ」
「……だから、なんだ」
「だから……見逃してくれ!」
「!」
その時、エ―スの手から大きな炎が燃え上がると、スモ―カ―の眼前に壁のように聳え立った。
「行くぞ!」
「あ……!」
「待て! お前ら……!」
スモ―カ―はなんとか炎から抜け出したが、既に二人の姿はなかった。
「くそっ!」
もう少しだったというのに。
レインはなんとしても自分の手で捕らえ、剣を奪わなければ。
剣を手に入れ、レインが死んだと報告すれば上のじじい達も安心するだろう。
あいつを政府のじじいの玩具になんぞされてたまるか。
(しかし……)
スモ―カ―はあの嵐を思い出していた。
あの嵐のお陰で死に目には合っただろうが、結果的にあいつはあの嵐に命を救われた事になる。
今の事といい、レインは悪運が強いのかもしれない。
「まったく……厄介な女だ」