Butterfly

□After-5
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それから数日の後、レインは熱が引き傷も癒えたが、目だけは見えるようにならなかった。


「で、本人はどうなんだ?」

「元気だ……。不思議なほど……」

「……なら、付き合ってやるか。本当に元気になるまで!」

「あぁ……。そうだな」


レインは自分の掌を目に当て、瞬きをしてみる。

すると、睫毛が上下する感触が掌を伝った。

どうやら、目は開いてるようだ。


「……」


しかし、見えないまでも光だけは薄っすらと感じられるようになっていた。

目覚めた時よりは良くなっているのかもしれない。


「レイン! ……何やってるんだ?」

「別に……」

「暇だろ? もうすぐ町に着く。買い出しに付き合え!」

「え……?」


見えなくなってからまだ外に出た事はない。

不安がない訳ではなかったが、レインは笑顔を見せた。


「何を買う?」

「お前の服! ……うんとエロいヤツな」

「いや、それはちょっ……」

「はは! ほら、行くぞ!」


シャンクスは戸惑うレインの手を引いて部屋の外に出た。

レインの目は、途端に眩しいほどの光を感じる。


「気持ちいい……」

「そうか……」


シャンクスは慎重にレインを誘導しながら微笑んだ。


「あ、そういやお前、賞金首になってたな! 一体何やらかしたんだ?」

「……」

(いや、それはあんたのせいだ……)

「ん?」

「いや……」





シャンクスはまるでエスコ―トするように、レインに町を案内した。

何か見える度に細かく説明してくれるお陰で、レインは町の様子を詳しく知る事ができ、次第に楽しい気分になる事ができた。


「シャンクス……ありがとう」

「ん? ……お! あの服いいな! ……スカ―トの丈が短くて!」

「いや、だから、そういうのは……」


二人は町中で笑い合い、端から見れば普通の恋人同士のように見えただろう。


「……」


しかし、レインは突然とても嫌な気配を感じ、足を止めた。

そしてシャンクスも同様に足を止めていた。

その時、二人に何かが飛んできたが、シャンクスが軽く剣で一蹴した。


「……」

「シャンクス!?」

「大頭! あっちに逃げました!」

「大丈夫だ……ここにいろ。おい! レインを頼む!!」

「はい!」


シャンクスの足音は瞬時に遠のき、レインは急に不安に駆られた。


「シャンクス……!」


すると、さっき威勢よく返事をした男がレインの肩に触れた。


「……大丈夫です! さっ! こちらへ!」


その声はレインがまだ知らない声だった。

戸惑いつつもどうする事もできないままその男に誘導され、どこかの室内に連れていかれる。

いや、もしかしたら船の中かもしれない。

足元が揺れ、何度もバランスを崩しそうになる。


「ふぅっ……。じゃあ後はよろしくな!」

「あぁ……。ご苦労だった」


その中は、複数の人間の息使いが聞こえた。

しかもそれはレインが知らない声ばかりだった。


「誰……?」

「ふん……久し振りだなぁ! ねえちゃん」

「俺達を覚えているか? ……と言っても見えねぇか。俺達はお前のせいで赤髪の船から下ろされたんだ!」

「……」


もしや、あいつらか。

ミホ―クへの恨みを晴らそうとして船の上で自分を襲った。

あの時は危うく喉を咬みきるところだった。

そういえば、あの後から見かけなかったかもしれない。


「……それで、何の用だ」

「それは、あんたに毒の攻撃をした奴等と一緒さ……」

「!」


まいったな、またか。


「それで……今度はシャンクスに逆恨みか? しつこいな」


レインは言いながら柄にするりと手を滑らせた。

まともに振れるだろうか。

しかし、何もしないよりはきっとマシだろう。

レインは溜め息をつくと、剣を構えた。
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