Butterfly

□After-4
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レインは一人でその部屋をノックした。


「……入れ」

「……」


中に入ると、白ひげはベッドに横たわったままでレインをちらと見た。


「行くのか? お嬢ちゃん……」

「ええ」

「この海での一人旅はおすすめしねぇがなぁ。……エ―スが嫌なら、他の奴にでも送らせるが?」


しかし、レインは首を横に振った。


「……一人で行く」


頑なな様子のレインに、白ひげは小さく息をついた。


「そんなに急いでどこへ行く? まだ体も完全じゃねぇだろ」

「……ユキリュウ島」

「冬島だな。……ここから順調に行けたとしても、一週間はかかるぞ」

「船を貸して欲しい」


白ひげは、体をゆっくりと起こした。


「構わねぇが……。一つ覚えときな。この海では、どんな人間も一切信用するんじゃねぇ! あんたはもう、高額賞金首なんだ」


白ひげが厳しい顔付きで言うと、レインは少し俯いた。


「それは、無理だ」

「んん?」

「私はもう、あなたを信用している……」


顔を上げたレインは、にっこりと笑って見せた。


「……」


それを見た白ひげも少しの後、薄く笑っていた。

この人に娘と呼ばれ、家族になれたらどんなに幸せなんだろう。

エ―スはこの人に救われたと言っていた。

自分の孤独な心もいつか癒されるのだろうか。


「では、夜が明けたら行く。世話になった!」

「お嬢ちゃん! 『奴等』がユキリュウにいなかったら、南西の島を捜してみな!」

「……ありがとう!」


まだ薄明るい空を背に、レインは一人、船を出した。




「レイン! レイン!?」

「なんだエ―ス……朝っぱらから」

「レインがいないんだ! ……オヤジ! レインを知らねぇか!?」

「……ほらよ」


白ひげは一枚のちぎれた紙切れを差し出した。


「!」


それは昨日エ―スと行った町で作ったレインのビブルカ―ドだった。


「死なねぇ証拠に渡しておくってよ! ……ただ、後は追うな。あいつは一人で行くって決めたんだ」

「はっ……なんだそりゃ。別れも言わせねぇであいつ……」

「ははっ! やられたな。エ―ス!」

「あぁ……まったくだ」


エ―スは昨日、町でレインに言った事を思い出していた。

ビブルカ―ドは、再会の約束をする為に渡すのだ、と。








After-5
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