Butterfly

□After-4
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「エ―ス……」


エ―スはそっと唇を重ねたが、久し振りのその柔らかい感触に、ついつい深く口づけてしまっていた。


「ん……!」


その時、レインは痛みが走る体を強ばらせた。


「……悪ぃ! 痛むか?」


エ―スは咄嗟に体を離すと、レインを慎重にベッドに座らせた。


「とにかく、早く治さないとな……」


エ―スはレインの頭にぽんと手を置くと、少し気遣うような視線を残し部屋から出ていった。


「……」


レインは、部屋に置きっ放しの手配書をもう一度よく見た。

そこには、鋭い目付きで剣を振るう自分の写真が貼り付けてある。

これだけ見ると、とても立派な犯罪者に見えた。

しかし、問題はそこではない。


(この背景は……ノウマ!)


こんな頃から政府は自分をマ―クしていたのだ。

なのに、世間には麦わらの一味の仕業だと公表した。


「……」


まぁ、あいつらの考えなど、傍にいてもわからない事ばかりだった。

民の事より保身を優先する奴等だ。

その考えなどわかりたくもない、というのが本心ではある。

レインは慎重にベッドに身を預け、息を大きく吐いた。


(それにしても、初頭で一億とは……どんな大犯罪者だ一体……)


レインは横を向きながら、ふと、スモ―カ―の事を考えた。

自分の事を捜しているだろうか。

いや、あの嵐の中海に投げ出されたのだ。

自分だって命があるとは思っていなかった。


「はぁ……いっそ、死んだ事になっていたらいいのに……」


レインはもう一度息を吐き出してから目を閉じた。




「なぁ、オヤジ。レインをここに置いてやってくれねぇか……?」

「……」

「頼むよ……。あいつは独りなんだ!」

「構わねぇ……が、それはお嬢ちゃんの望んだ事なのか?」

「え……?」

「……少なくとも俺には、あいつが孤独に苛まれてここに来たとは思えねぇ」

「……」

「あいつは大人しくここにいるようなタマじゃねぇぞ」


そう言うと、白ひげはニッと笑って見せた。


「オヤジ……」


そういえば、レインは行きたい所があると行っていた。

だが、そこに行ってまた戻って来る保証は無い。

エ―スは、もう一度レインの部屋へと向かった。
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