Butterfly
□After-3
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夜が更け、船内が静かになったのを見計らってレインはある物を探しにきていた。
しかし、突然背後に気配を感じたと同時に声をかけられ体が小さく跳ね上がる。
「おい、元王女……何をしている?」
「!」
スモ―カ―だった。
すっかり呆れた顔でこちらを見ている。
「まったく……また見張りを撒いたのか」
「はは……寝ていなかったのか?」
誤魔化すように笑ってみたが、レインは強制的にその部屋から出され、船室まで連行されるような形で連れて行かれた。
「……」
レインは横を歩くスモ―カ―をちらと見ると、
「スモ―カ―、ありがとう」
と、微笑んだ。
結局スモ―カ―は、レインを新世界まで送り届けてくれると約束してくれたのだ。
「……善良な市民を、支部に送るまでだ。その後は知らん」
「ふふ……そうか」
その時、レインが小さく咳き込んだので、スモ―カ―は葉巻を指に挟んで遠ざけてやった。
「まったく……それを咥えてないとどうなるんだ?」
「……息ができん」
スモ―カ―が真面目な顔で言ったので、レインは吹き出した。
「でも、咥えてない時もあるだろ?」
「当たり前だ。寝る時に、飯食う時に、それから……」
「キスする時?」
「!」
突如、レインはスモ―カ―に抱きつき、口付けた。
煙の香りが漂ってはいたが、こういう時はそんなに悪くないもんだ、と思った。
「おい……!」
しかし、レインは葉巻を持っていない方の手ですぐ引き剥がされた。
「……なんだ、男が好きなのか?」
「馬鹿言えっ!! 危険な女とは関わりを持ちたくないだけだ!」
スモ―カ―は声を荒げたが、レインは悪びれもせずに笑った。
「そうか、残念だな。……でも、これで無関係でもなくなった」
「なにぃ……ッ?」
「ふふっおやすみ!」
レインはスモーカーの顔に怒りが広がりきる前に、素早く船室に滑り込んだ。
よく見るとその部屋の前には、見張りを頼んだ海兵が倒れている。
「あの女……やりやがった!」
スモ―カ―は舌打ちしたが、その顔からは自然と笑みが零れていた。