Butterfly

□After-3
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「いてて……あれ? 俺等は何を……?」


気を失っていた海兵達が起き出した。


「はっ! 大佐……あの……一体何が!?」

「……いや、問題ない。ちょっと船が揺れただけだ」


そう言うと、スモ―カ―は船室の一つへと入った。


「……大人しくしてるようだな」

「なぁ、それ咥えてないと真っ直ぐ歩けないのか?」


よほど、葉巻がお気に召さないらしい。

スモ―カ―は二つの葉巻のうち、一つを消してやった。


「俺の質問に答えろ……その答えによっちゃ、ただじゃおかねぇ!」

「……なんだ」

「麦わらの船に乗っていたというのは本当か?」

「あぁ。……しかし、一時手を借りただけだ」

「お前が会いに行こうとしているのは、海賊だな。誰だ?」

「……」


その質問には、レインは沈黙した。

その様子から、かなりの大物である事は間違いなさそうだ。


「答えられないか」

「まぁ、まず話を聞いてくれ……」


海軍にはあまりいい印象はなかったが、この男は少し違うかもしれないと、レインは思っていた。

どこから話すべきかと迷ったが、やはり、最初から話すしかなさそうだ。





「……本当なのか、その話は……!?」

「嘘をつく理由がない」

「……」


思いがけないようなレインの話に、スモーカーは目を見張った。

海軍が一国の戦争に関わっているなどとはまるで信じ難い、と思いかけて、スモーカーは少しの後に小さくかぶりを振った。

いや、そうでもないか、と。

貴族に頭が上がらない上層部ならやりかねないのかもしれない、と、スモ―カ―は煙と共に大きく息を吐いた。


「……」

(しかし、この女の話を全て信じるわけには………)


話に出てきた痣も傷も、もうこの女にはない。

唯一あるのはこの剣だけだ。


「信じられないか」

「……全部はな」

「では、戦ってみるか?」

「!」


レインは鞘から光る刃をちらと覗かせた。

二人しかいない室内に、ぴんと張り詰めた空気が漂う。


「……海兵が市民に暴力を振るう事は禁じられている」

「ふっ……ははっ! そうか」


苦々しい顔のスモ―カ―をレインは笑い飛ばすと、その目の前へと近づいた。


「――では、抱いてみるか?」

「あぁ?」

「その外科医が言っていた。体が火照ると、傷痕が薄っすらと浮かび上がる、と」


レインは試すような視線を向け、すぐに服を開こうとした。

しかし、


「やめろ」


スモ―カ―は、レインの両手を掴んだ。


「あんたは、もう過去のあんたじゃないはずだ」

「!」

「……とりあえず今の話は信じてやる。大人しくしていろ」


そう言うと、スモ―カ―はその部屋を後にした。


「ふぅん……」


海軍にもなかなかいい男がいるじゃないか、とレインは思った。

しかし、あの煙は慣れないな、と、再度顔をしかめた。
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