Butterfly

□After-2
3ページ/3ページ


「しかし、どうやって海軍の船に乗り込む?」


二人は、何度か訪れた事のある町に来ていた。

しかし、ここ数年の間に様子は一変していた。

そこらには海賊らしき男達がはびこり、すっかり柄が悪い町に姿を変えたようだ。


「こいつらの手を借りる」

「え……?」

「絶対に手は出すな」

「ちょ……!」


ミホ―クはそう言うと、すれ違った男達の方にレインを突き飛ばした。


「痛ぇっ! 何しやがんだこの女ぁっ!」

「あ……いや……」


レインは振り返ったが、そこには既にミホ―クの姿はなかった。


「ねえちゃん、いい度胸だな! 俺達が誰だか知ってんのか!?」


事態が呑み込めないまま、キョトンとしたレインに構わず、男達は凄んでくる。


「待て……。よく見たらいい女じゃねぇか」

「お頭……」

「こいつは連れて行く。貴族に売ればいい値段がつくぜ!」

「なっ……!?」


レインは一瞬構えたが、先ほどのミホ―クの言葉が頭を過ぎる。


「……」


未だ意図は掴みかねていたが、レインは黙って連れて行かれる事にした。




小さな海賊団の頭は大満足だった。

一つの町でなかなかの粒が揃った。

この女達を売りさばけば、どれほどの大金が手に入るのだろう。

特にあの女だ。

あの髪と瞳の色は、きっと貴族の変態共に受けがいいに違いない。

男は密かにほくそ笑んだ。


「頭ぁ! この剣はどうします?」

「あぁ? ……ほぉ。なかなかいい剣だな。これは俺がもらっとく」


男がその美しい剣を腰に携えた時、捕らえた女の一人が親しげに微笑みかけてきたのに気付く。


「んん〜? なんだ、ねえちゃん。俺達が怖くないのか?」

「ふふ……だって、あなた格好良いんだもん。……ねぇ、二人っきりになれない?」

「なんだ……そんな上品な顔して、お前も好きもんだな……へへっ」


男は満更でもない顔を更にいやらしく歪めた。

売りに出す商品はまず味見をしとかないとな、と、男は女の一人を奥の部屋へと連れて行った。


「いいな〜頭……」


しかし、他のクル―達には、女に一切手を付けるなと言い渡しておいた。



船室に入ると、女の方から口づけてきた。

やはり、この女は好き者らしい。

もしくは、本当に自分の事を気に入ったのか。

その柔らかい唇を存分に味わう。


「んん……ねぇ、これほどいて?」


女は、手首を硬く縛ったロ―プを目で促す。


「ふふ……いや、まだだめだ」

「!」


男はロ―プをほどかないまま、女の服を上に捲り上げた。

途端に、形のいい乳房が現れる。


「あぁん……!」


男は、その白くて弾力のある乳房を思い切り貪った。

女は甘い声をあげ、背を仰け反らせて悦んでいる。


「な? こういうのもいいだろ?」

「あ……あう……ううん……」


このまま達しそうなほど女は喘ぎ、身を捩じらせている。

男は興奮する下半身を抑えきれずに、女をベッドに押し倒した。

今度はスカ―トの中に指を滑り込ませ、たっぷり湿っているであろう下着の奥を弄った。


「ん?」


しかし、そこは悲しいほどに乾いていた。

思わず女を見ると、今まで喘いでいたはずの女は、一転して冷めた目をこちらに向けている。


「やっぱり、体は正直よね……」

「あぁ? なんだおま……!」


突然人が変わったようになった女を信じられない思いで見つめた時、船室のドアが開き、何かが素早く滑り込んできた。


「悪いな……お楽しみ中」

「!?」


男は突如背を斬られると、驚愕の表情のままで息絶えた。


「ふん……やはり切れ味が悪いな。これは返してもらうぞ」


レインは、男の腰に下げてある剣を自分の腰へと戻した。


「この大きな男を一撃で仕留めるなんて……すごいのね」

「いや……。悪かったな。来るのが遅れたようだ」

「ふふっいいのよ。こっちもそれなりに楽しんだから」


レインは女のロ―プをほどいた。


「ねぇ……残りの男達は?」

「あぁ。片付けておいた」

「え……!?」

(まさか……この短時間で!?)


しかし、レインの言った事は本当だった。

さっきまで縛られていた女達は全て自由の身になっており、かわりに海賊達の死体がそこらに転がっている。


「……ねぇ、あなたの剣はもしかしてミホ―クに……?」

「あぁ、まぁな。……それより、さっき言ってた事は本当なのか?」

「えぇ。もうすぐ海軍がやってくると思うわ」

「悪いな。巻き込んでしまって……」

「ふふ……ミホ―クの頼みだからしょうがないわ。元々あたしは自由な娼婦だから、気にしないで!」




レインがこの船に連れてこられた時この女、ジェシ―がこっそり耳打ちしてきた。

この海賊団は頭以外は大して強くない事、そして自分が頭の油断を誘うという事も。

ジェシ―以外の女は本当に攫われてきたようだったが、やっと安心したようにその顔には笑みが広がっている。


その時、窓から軍艦が見えた。

なんだかでき過ぎのような展開だ。


「あ……ほら、見て?」


ジェシ―が軍艦と反対側を指差すと、そこに一隻の小さな船が見えた。


「ミホ―ク……」

「何かあったら助けてくれるつもりだったのよ、きっと!」

「……」


レインはその背中を目で見送ったが、ジェシ―は、


「この借りは高くつくからね……」


と、遠ざかっていくそれにウインクしてみせた。

せっかく礼を言いに来たのにまたもや世話になってしまった、とレインもそれを見ながら小さく息をつく。

まぁ、いい。

何度でも会いに行こう。

きっと、その度に呆れた顔で溜め息をつかれる事だろうが、その顔を見に、また会いに行こう。








After-3
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ