Butterfly
□7.終わりの終わり
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夜になり、レインは暗い海を眺めた。
少し離れた先にいくつかある、軍艦の灯りを見据えながら自分の心と静かに向き合っていたのだ。
ここ数日は本当に楽しかった。
皆といると、自分の運命の事などすぐにでも忘れられた。
「眠れないか……?」
「!」
その時、背後から抱き締められた。
それは、よく知ってる温もりだ。
「ゾロ……」
この時間に起きているゾロも、もしかしたら眠れないのかと思った。
(普段はいつでも寝てるくせに………)
「ん?」
「いいや……」
レインは笑顔を向けてきたが、抱き締めたその体はどこか力が抜けきっていないように感じ、ゾロはもう一度力を込めた。
レインの髪を横に流すと、耳に何度かキスをして、最後にゾロは軽く耳朶を噛んだ。
「俺が、眠れるようにしてやる……」
「あ……」
連日ゾロに抱かれているせいか、その肌は少しの刺激にも敏感になっている。
思わず目を閉じて息を呑んだレインを、ゾロは軽々と抱きかかえた。
「眠れるまで、何度でも抱いてやる」
「ゾロ……」
抱きかかえたまま唇を合わすと、二人はその状態で船内へと入った。
軍艦の中は広く、部屋は余りすぎるほど余っている。
その中の一つを適当に選んで入ると、ゾロがドアを後ろに蹴り飛ばして乱暴に閉めた。
相変わらず唇を重ねたまま、二人はベッドに沈み、その存在を何度も確かめるようにしばらくお互いの唇を味わう。
触れた所すべてに神経が行き届くような感覚で、こんな風にゾロと肌を合わすのは初めてだと、レインはそれを十分に受け止めながら考えていた。
優しく、丁寧な愛撫に息が弾む。
レインも、ゾロの体に何度もキスをした。
いつもと違う動きに心がひどく揺さぶられ、一歩一歩確実に近づいてくる現実から逆に目が逸らせない。
これが、最後なのだと――。
ゾロは、怖かった。
レインを失うかもしれない恐怖が、広大な闇となって心を埋め尽くそうとする。
そして朧気だったが、今までこの女に対して自分が異常なまでに執着していた理由について、一つの答えが浮かんでいた。
しかし、それを決して認めたくはなかった。
レインは怖かった。
もうこれ以上、周りの人間が死ぬのは見たくない。
そろそろ、終わりにしよう。
夢にうなされる自分も。
暗い海を見つめる自分も。
しかし、その最後の時、自分はどうするのだろう。
考えれば考えるほど怖かった。
「あぁ……ッ! ……もっと……もっと……ッ!」
払拭できない恐怖に、二人は夢中で腰を動かしていた。