Butterfly

□7.終わりの終わり
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「レイン! あ、やっぱ、着替えたんだ?」

「あぁ……。やっぱり、あれは……、ちょっと……」


レインは足元を居心地悪そうにモゾモゾとさせ、頬を赤らめた。


「レインちゅわん! な、なんて可愛い仕草なんだ!! ……着替えたって? 何? 何?」

「うん。ワンピ―ス、似合ってたんだけど……」

「ワ、ワンピ―ス!? レインちゃんがワンピ―ス!! ……はっ! もしかして、ひとつなぎの大秘宝とは、君の事なのか……?」

「おい、サンジがまたおかしいぞ……」

「ほっとけ……こいつはこれで幸せなんだよ」

「なぜ着替えてしまったんだぁーーッ!?」


その時、レインの後ろからゾロが出てくるのが見えた。


「!」


サンジとナミに、ある考えが浮かぶ。


(そういう事か……)


まぁ、ゾロの身になれば当然か、とナミは思った。

あんな可愛い姿を他の男の目に晒したくはないだろう。


「……てめぇ……まさか……!?」


驚愕の表情で見つめるサンジの耳元で、ゾロはぼそっと呟いた。


「……すごかったぜ」

「!!」

(……独り占めだ! ワンピ―ス独り占め!! ……こいつ……海賊王だ……!)


サンジはがっくりと膝をついた。


「お〜い! レイン、釣りするぞ〜!」

「ふっ……わかった!」


レインはルフィの横に座った。

揺れる波を見ていると、心が穏やかになるのを感じる。

明日には敵地に着くというのに、これから起こる事の方が、まるで目覚めると終わる悪夢のようだ。


「あ〜! 餌持ってかれた! くっそ―!」


ルフィが隣で口を尖らせている。

もしかしたら穏やかになる理由は、波のせいじゃないかもしれないな、とレインは思った。


「ルフィ……色々世話になった。皆には……本当に感謝してる」

「ん? なんだよ、いきなり」

「……」


言える時に言っておかないと、機会を永遠に逃す事もある。

特に、今日中に伝えておきたかった。

明日には、自分がどうなっているかわからない。


「おい、レイン……」

「……え?」

「引いてる……いや、すげぇ引いてるぞ!!」

「!」


その途端、船体が揺らめいた。


「でけぇ! おい、みんな手伝え―!!」


暴れるその獲物に、一瞬船が引っ張られる。


「おいおい、一体何釣ったんだ!?」

皆が集まり、レインの体を支える。


「おい、てめぇも手伝え」

「なんだ海賊王……俺の事は放っとけ……」

「誰が、海賊王だっ!?」

「くっ……それは、俺だ―っ!!」

「いや、言ってる場合じゃねぇ―っ!!」

「うわあぁぁぁ〜っ!!」


その悪夢の前夜、レインは生まれて初めて、海獣を釣った。

その時はまだ自分の身に何が起きるのかは知らずに、屈託のない笑顔を惜しみなく注いでいた。

いや、わかっているからこそ、笑顔で過ごしているのかもしれなかった。
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