Butterfly

□7.終わりの終わり
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港にある軍艦はすでに一隻のみとなっている。

ゾロと共に近づいてくるレインを見て、船からもの凄い勢いで飛び出してきた人物がいた。


「レイン様!」

「……スタンレ―!」


レインが一番安心する顔がそこにあった。

なんだか、とても長い間離れていたような気さえする。


「レイン! 早く乗れよ!」

「ルフィ……みんな!」


レインは船に飛び乗ると、駆け寄ってきた皆に囲まれ、一気に温かい空気に全身が包まれる。


「レイン〜! 無事だったのね!」

「あぁ……あの時はすまん。ナミ」

「お! また怪我してるな! 後で診せろよ!」

「ありがとう……」

「レインちゃん! 君の為に豪華な食材でごちそう作ったよ〜!」

「いや……それ、この軍艦にあった食材だろ……」

「レイン! 着くまで釣りするか〜?」

「お前、気ぃ抜きすぎだろ!!」

「だってよぉ、何して行ったって、同じだろ?」

「ふ……確かに」


レインは自然と笑っていた。

こんな風に人を笑顔にするのはやはりすごい事だと、皆を見てあらためて思った。



「おい、エロ! 遅ぇぞ! またどっかで迷子にでもなってんじゃねぇかと思ったぜ!」

「あ? あぁ……悪い」

「!?」


いつも通りサンジが突っかかったにも関わらず、ゾロからはほんの少しも怒る気配はなかった。


(なんだ一体……気味悪ぃ!)


ぞっとした顔のサンジを乗せて、船はラボルディ―へと静かに出港した。


「え……ロク王が?」

「えぇ。スカルトは今それどころではないというのに……船の修理まで引き受けてくださいました」

「いい王様だよな〜! なんで戦争なんかやってんだ?」


ルフィの言葉に、レインの表情は途端に曇った。


「……したくてしたのでは、ない。恐らく一方的に攻められたのだ」


自分の国もそうだった。

あの歯痒い気持ちは、今もレインの胸を苦しく締め付ける。


「しかし、よくあの騒ぎの中で見つからずに船を奪えたもんだ」


ゾロが尊敬とも驚きともいえないような視線を皆に向けた。

どうやら、ゾロがレインを捜し残りの者が船を奪う、という算段だったようだ。

しかし、皆一様に顔を見合わせた。


「いや、それがさぁ……なんかわかんねぇんだけど……」

「あったのよね? なぜか」

「用意されたみたいに、無人の船が」

「……え?」


ルフィには人知れず軍艦を奪う気など更々なく、最初から戦場に飛び込んで行ったらしいがサンジがそれを止め、ナミが船を発見したという事だった。


「なんだそりゃ? あまりに都合がよくねぇか?」


ゾロはすぐに怪訝な顔をしたが、その時、しばし考え込んでいた様子のレインがぱっと顔を上げた。


「もしかして……!」


しかし、そんなレインにゾロは素早く反応してみせた。


「……なんだ? またどこぞの海賊の手助けでもあったんじゃねぇだろうな……?」

「……」


まだ可能性の段階であるにも関わらず、既にゾロは不機嫌な顔になっていた。

なかなか鋭いな、と思いつつ、レインはそんなゾロの様子につい吹き出した。


「いいや、あれは……医者だ」
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