Butterfly

□7.終わりの終わり
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「おい、ゾロは?」

「ルフィ! まだ隠れとけよ! 船が全部行ってから顔出せ!」


途端にサンジがルフィの頭を掴む。


「だってよぉ、どれに乗ってるかわかんねぇだろ?」

「大丈夫! 来たらすぐわかるから。それより、あたし達の船だけど……」


何も考えずに突っ込んできた一味の船は、やはり砲弾の雨に晒された。

いくらか故障したままの船をここに置いて大丈夫だろうか、とナミは危惧していたのだ。

しかし、敗戦の後で未だ戦火に燃えるこの国には、この壊れた海賊船を気にする者などいないかもしれない。

自分達の事できっと精一杯なはずだ。


「なぁ、おっさんは?」


ルフィは壊れた船よりもいない人間を気にしているようだった。


「あぁ。なんか怪我人を運んだりしてたな……」

「あ、来た!」


スタンレ―は、見知らぬ男を一人連れていた。






まだぐったりと弛緩したレインの体をゆっくり起こすと、ゾロは優しく抱き締めた。


「ん……ゾロ……」


レインは振り返ると、唇を重ねた。

そのキスは貪るような激しいものではなく、恋人同士が交わすような甘いものだった。

自然とお互いの腕を回し、温もりを確かめるように抱き締め合う。


「……」


しかし、ゾロは急に体をぱっと離した。

突然の事に不思議そうに見つめるレインから視線を外すと、


「またヤリたくなるだろうが……」


と小さく呟く。


「ふっ……そうか……」


さっきまであんなに激しく求めてきたくせに、と、レインは少し可笑しくなった。


「行くぞ……あいつらが待ってる」

「みんな来てるのか!?」

「あぁ」


レインは飛び上がると、急いで服を着た。

こんなに心が弾むのはきっと、やはり一人では不安だったせいだろうな、と咄嗟に自己分析してみたりする。

もう誰も巻き込みたくはないのに、なんだか矛盾しているな。

ちらとゾロの方を見ると、同じようにこちらを見ていたのか、視線がぶつかった。


「なんだ? 何考えてる……」

「ふ……いや」


レインは服を着ると、床に刺さったままの剣を引き抜いた。

その刃はいつも白く光っている。

まるで、ただの一度も人など斬った事がないというように。

ずっとこれに振り回されてきたが、結果的にこれはレインの命を救ってくれた剣でもあった。

レインは飽きるほど見てきたこの剣を、あらためてまじまじと見つめた。

こいつが敵となるのか味方となるのかは、きっと自分次第なのだ。


「おい、行くぞ」

「あぁ」


レインはいつもよりも剣を慎重に納めて、ゾロの後へと続いた。
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