Butterfly

□7.終わりの終わり
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燃え上がる怪物は苦痛にのた打ち回り、左の塔に手をかけ腕を回すと、抱き締めるようにして上に持ち上げる。


「!」


大地を揺らしながら、その巨大な塔は怪物によっていとも簡単に引っこ抜かれた。

降り注ぐ瓦礫の山が少し当たっただけでも、それは致命傷になりかねない。


「おい、お前ら下がれ!」

「危ねぇっ!」

「……くッ!」


その時、エ―スが膝をついた。


「エ―ス様! ……やはり、まだ体が!?」

「うぐあぁぁぁぁっ!!」


怪物は引っこ抜いた塔をぶんぶんと振り回し、逃げ遅れた兵士は蟻を蹴散らすように無力に飛ばされていった。


「エ―ス様! こちらへ!!」


スタンレ―は、エ―スを城から離れた所へと連れて行った。


「きゃあっ!」


塔の欠片が闇雲に襲い掛かって来て、ナミは頭を抱え込んだ。


「ナミ! こっち来い!」


その時、怪物が背にしていた城壁の穴から、一人の男が飛び出した。


「てめぇ……俺のナミさんに、何しやがんだ―っ!!!」

「!?」

「サンジくん!」


サンジの蹴りは怪物の横顔を捉えた。

ただでさえバランスが取り辛い体に加え、振り上げたままの塔の重みと蹴りの衝撃で、怪物はそのまま無様に倒れた。

その巨体に、同じくらいの大きさの塔が覆い被さる。


まるで地震のような衝撃に、城はまたしても大きく揺れ、さらにひびが広がるのが見える。

もう中は崩れてきているかもしれない。


(レイン……まだ出てこないのか!?)

「くそ……!」

「おい! マリモ!! てめぇは先に中入ってろ!!」

「あぁ!? 突然出てきて何言ってやがる!」

「そんな心配そうな顔でいられちゃ邪魔だっつってんだよ!!」

「誰が邪魔だ! こらぁ!!」

「だから、おまえらこんな時に……」


いつものように怒鳴りあう二人の後ろで、塔の下敷きになっている獣の腕が、またぴくりと動いた。


「!」

「ぐぐぐぐ……!」


塔が背から転がり、怪物は残りの力を振り絞ってまた起き上がろうとしていた。

炎で身は爛れ、嫌な臭いがまだそこら一帯に充満している。

尾は斬られ、夥しい量の血を流し続けている。

それなのに起き上がり殺し破壊する事を止めようとはしないのだ。

それはもう、生への執着なのか、死への執着なのかわからなかった。


「……」


ルフィはその姿に、病に伏せながら戦争を続ける王の姿を重ねた。

――楽にしてやろう。

あの王もきっとそれを望んでいた。


「お前は……」

「もう……」

「起きてくんな―っ!!!」


ルフィ、ゾロ、サンジは、一斉に攻撃を繰り出した。


「!!」


起き上がろうとしていたそれは、変な体勢のまま再度倒れ、その身を城に埋めた。

その巨体はようやく沈黙したようだった。

しかし、また破損した城はもう持ちそうになかった。

上の方から性急に崩れて始めてきている。


「ち……!」


ゾロは、降り注ぐ瓦礫を避けながら、城内に素早く身を滑り込ませた。
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