Butterfly

□7.終わりの終わり
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また広間は揺れ、天井からパラパラと小さな瓦礫が落ちてくる。

どうやら、外で何か起こっているようだ。


「あまり、時間がないようだな……」


ジュ―ドが少し上を見上げて言った。

そうかもしれない。

しかし、こんな城は無くなった方がいいともレインは思った。


「本当に腕をあげたな……技術もそうだが、心力が前とは比べ物にならないほど満ちている」

「……」


この男はいつものように揺さぶるような言葉を一切かけてこようとはしない。

昔、まだ未熟な少女に剣を教えてくれている時の、ジュ―ドみたいだった。


(なぜ、今日に限って………)


もしくは、これも作戦なのだろうか。

こちらの油断を誘い、隙を突くなんて事はお手のものだろう。

しかし、ジュ―ドにそんな様子は微塵もなかった。

どこか懐かしんでいるような、この状況を楽しんでいるような、そんな雰囲気だ。

レインはゆっくりとジュ―ドに近づいた。



右手の化け物は、なぜか先ほどから沈黙している。

こればかりはお前の意思でやってみろ、と言われているようだ。

剣を掴む手に自然と力が籠もる。


「その剣を持つべきは、私だった……。しかし、いくら探しても見つからなかったのだ」


聞きたい事も言いたい事も色々あったはずなのに、言葉にならない。

剣を掴む手は少し震えている。

レインはジュ―ドの傍で立ち止まった。


「私はあの日から、その剣に殺される事を夢見ていた……」


ジュ―ドは、レインを見上げ、剣に微笑んだ。

その微笑みは、昔のジュ―ドのままだ。

一体なぜ、こうなってしまったのだろう。

辺りは瓦礫のせいで砂ぼこりが舞い、レインの視界を微かに霞めた。


「何も無ければその剣は、お前の手で聖剣になっていただろうな……」


未だ血が滴るその剣を、どこかうっとりとした表情で見つめている。

レインは、剣を両手で掴んだ。

そして、先ほどから座ったままのジュ―ドの頭上にゆっくりと振り上げる。


「ジュ―ド……覚悟!!」
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