Butterfly

□7.終わりの終わり
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「でけぇ……なんだこいつ?」

「どっから出てきたんだ……あんなもの!?」

「わからないけど……いきなり城の後ろから……きゃあ!」


城と同じほどの大きさで、突如現れた巨人に広場はまた騒然となった。

しかし、その体は全てが人間のものではない。

頭からは角が生え、腕は虎のような猛獣の形をしており、下半身は鱗がびっしりと敷き詰められた、大蛇のようだった。

なぜ自分がここにいるのかもわからない、といった彷徨える瞳をぎょろつかせるが、殺気だけは十分に漲っている。


「聞いた事あるぜ……この国は密かに人体実験のような事をして、怪物を産み出しているとか……」

「えぇ!?」


エ―スが、敵に止めを刺しながら言った。

その間も、この国の兵士達は目の前の怪物から逃げ惑っているが、その数の多さでは、すんなりと逃げ出すのは困難なようだった。

どうやら、敵味方の判別はできないらしい。

全てを破壊するまで止まらないのかもしれない。

その時、その怪物はナミの方を向いた。


「やだ! 目が合った!!」

「んナミさぁ―んっ! 危な―いっ!!!」


塔の窓から飛び出てきたサンジが、回転した勢いのまま、怪物に踵落としを決めた。


「ぐおぉぉぉ〜っ!!」


突然の衝撃に驚いたらしい怪物が、耳を塞ぎたくなるような叫び声をあげる。

それは猛獣の腕で頭を撫でつけると、サンジをギロリと睨み付けた。


「そうだ……こっちに来い!」


サンジは怪物を引き付けながら、仲間から意識的に遠ざかっていった。


「サンジくん! ……まさか、一人で戦うつもり!? まぁ、あたしは安全になったからいいけど!」


ナミは至って真面目な顔で言っている。


「えぇ〜っ!? ……ナ、ナミこえぇ! ナミがこえ―よ!」


横にいたチョッパ―がガタガタとその身を震わせた時、すばしっこく逃げるサンジを怪物は門の近くでようやく追い詰めた。


「はぁ……はぁ……」


やっとこの男を殺せるのだと、怪物は嬉しそうに、そのおぞましい顔を歪ませた。

しかし、笑ったのは怪物だけではなかった。


「さて……追い詰めたのは、どっちだ?」

「!?」

「よ―し! どけぇ―っ!! サンジ!!」


その声を合図にサンジは横に大きく飛び退き、何かが怪物の背中を直撃した。


「ぐぎゃあぁぁぁ〜っ!?」


怪物は大きく背を仰け反ったが、遠くにそびえる右側の塔から、ぶれる事のない弾道でもう一発、砲弾が命中した。

追い討ちをかける痛みに、怪物は堪らない、というように大地に転がった。


「やったぁ!」


ナミが砲弾が飛んできた方を振り返ると、右の塔にある窓から親指を立ててみせるウソップの、誇らしげな姿が見えた。
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