Butterfly

□6.死の外科医
9ページ/10ページ


「おい、なんとかならねぇのか!?」

「なるわけないでしょ! あんた、あの軍艦の数見たの!?」

「お、お、お、おい、ゾロ!! 落ち着いて聞け! 俺は、あの島に入ったら死ぬ病なんだ……!」


その時、軍艦の群れを黙って見ていたサンジがぽつりと言った。


「でも……レインちゃんはあの国に入る事ができたのか? どう見ても好戦的な雰囲気だが……」

「……」

「でも、レインは海賊じゃねぇぞ?」

「海賊じゃなくても、味方以外は入れそうもないわよね……。エ―スからも、レインの情報は聞けなかったし。結局、どこにいるのかは……」


エ―スの状態は酷く、口はしばらく利けそうもなかった。

船に乗せる状態ではなかった為、ディアナに任せ、プレストンで治療を続ける事となっている。


「そうだぜ、ゾロ! きっとレインもあの国には入ってねぇって! だから何も見なかった事にして、ここはひとまず退散してだなぁ……」


あまりの恐怖に腰が引きまくっているウソップに構わず、ずっと押し黙っていたスタンレ―が顔を上げた。


「私は……昔海軍に在籍していました」


その言葉に、その場にいた全員が振り返る。


「なんだ、突然!?」

「おっさん、まじか!?」

「えぇ……。そのお陰で、元部下から色々な情報を聞き出す事ができていたのですが……。実は、最近連絡が途絶えてしまって……」

「それって……」

「えぇ。私の存在を感づかれたのかもしれません。部下の安否が気がかりですが……」

「なんで、海軍辞めたんだ?」


ルフィが何の気なしに聞いた。


「え……今、そこ聞くか!?」

「……ある戦争で、クライズメインの王に命を救われたのです。私はすぐに海軍を辞め、あの方の為に残りの人生を捧げようと誓いました」


そこまで言うと、スタンレ―は少し表情を曇らせた。

その国も王も、今はもうないのだ。


「……」

「しかし、部下からの最後の情報によると、一週間ほど前、鷹の目のミホ―クが一隻の海賊船と接触したのが目撃されています」

「!」

「海賊船!?」

「えぇ……。その船にレイン様は乗っているかと。ですから……」

「レインも入国できてない可能性が高いって事ね?」

「えぇ」

「しかし……だからといって諦める事にはなんねぇだろ」

「あの国は陸からは渡れない……。どうしても船で入らなきゃならないわ」

「そうです。しかし、海軍は国の周りを固めており、軍艦を奪おうとすればすぐに見つかってしまうでしょう……。ですから、恐らくレイン様は一旦他の国に向かったはず!」

「他の国……」

「えぇ。ラボルディ―の船を手に入れるとしたら、今戦っている相手の国、スカルトに行くのが確実でしょう。しかし、ラボルディ―程強大ではないとしても、スカルトも今は戦争中……。上陸できるかどうか……」

「なんだ。そんなの、してみないとわからないだろ?」


ルフィが事も無げに口を開いた。


「ルフィ……」

「行くっきゃねぇな」

「お、おい……もうちっと待てば、戦争も終わって、すんなり入れるようになるんじゃねぇか?」

「では、スカルトまでの針路を説明します」

「おっさん、無視か!?」


しかし、どうにか危険な道を回避出来ないかと考えるウソップにも、本当は重々わかっていた。

一人の男の手によって、世界が破滅の道に向かっている事を。

もうレインには時間がない、という事も。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ