Butterfly

□6.死の外科医
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「大頭、これを……」


シャンクスは一枚の紙を受け取り、顔色を変えた。


「やはり、そうか」


懸念していた通りの結果に、自然と顔が険しくなる。


「使いを出せ……」

「はい」


すぐに使いに出た男を見送ると、自然と深く息をついた。

最近の海の様子はおかしいと思っていたが、近い内にもっと荒れる事になるかもしれない。

シャンクスは果てしなく続く海の先に目を向けた。


(レイン……)


最後に見た屈託のない笑顔を思い出す。


(今傍にいるべきなのは俺じゃないが、……お前の笑顔は俺が守ってやる)


シャンクスは隣にいるベックマンと目を合わせ、無言で頷いた。








「お! お前、傷はもういいのか?」

「よかったな〜。キャプテンがいなかったら、お前多分死んでたぞ」

「……」


レインが窓から海中を泳ぐ魚をぼうっと見ていると、ここのクル―らしい男が二人、話しかけてきた。

レインは命を救ってもらった礼を二人に述べた。


「礼はキャプテンに言いな!」

「まぁ、俺等は何もしてねぇ。……それよりお前、『鷹の目』とはどんな関係なんだ!?」


先程から落ち着きがない様子でレインを見ていた方の男が、もう耐えきれない、というように聞いてきた。


「あぁ! びびったよな〜! あの男が突然現れて目が合った時、俺死んだと思った!」

「俺も!」


そう言うと、男達は顔を見合わせて大いに笑った。


「……」


今の話を聞く限り、ミホ―クとロ―は面識がある訳ではなさそうだった。

だとすると、やはり自分の身を案じて傍にいてくれていたのだろうか。

ミホ―クの事だから、ロ―が何者かも知っているに違いない。


(知っていて、私の命を救わせた……)


興味津々の顔付きで見つめている男達に、知り合いじゃないが、気紛れで助けてくれたのだろうと適当に説明しておいた。

二人はかなり怪しむような視線を向けたが、レインは構わず海中に目を移した。


「……珍しいか? 潜水艇が」

「あ、キャプテン」

「……」


そこにロ―が来た。

レインは、昨日の続きを聞かせろ、というような視線を送ったが、相変わらずその瞳には感情というものが感じられなかった。


「潜水艇か……。斬った事はあるが、乗るのは初めてだな……」

「!」


レインは遊泳する魚達に羨望の眼差しを向けたままぽつりと言った。


「……こいつ、今なんつった?」

「いや、聞こえねぇ……聞こえても、考えねぇ……」


しばらく怪しむような視線を注いでいた二人は、やっとそれを逸らすとひそひそと囁き合った。


「……飯にする。お前も来い」


そう言うと、ロ―は先導するようにゆっくりと歩き出した。

しばらく怪訝な顔で囁き合っていた二人も顔を上げ、レインを振り返った。

レインは、魚とロ―を何度か交互に見比べた後、壁に手を沿え歩き出した。
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