Butterfly

□6.死の外科医
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「お前は……一体?」


レインは途端に後退り、身構える。


「ふん……剣を持たないお前に何ができる」


ロ―は馬鹿にしたように笑ったが、


「できるさ……刺し違える事くらいはな」


脅しではない、とばかりにレインは殺気を迸らせた。


「……」


ロ―はレインをしばらく見つめていたが、手を軽く振って背を向けた。


「やめろ……俺は奴とは違う」


ソファ―に腰掛け、レインの右半身をじっと見る。


「……座れ。長くなる」


ロ―はそう言って向かいの席を目で促した。

どうやらレインの体を気遣ってくれたようだった。

確かに未だ熱を持ち、脈打つ度に痛みが走る。

レインは、敵かどうかよりも、ロ―の医者としての部分を信じる事にした。

少しよろけながら腰掛けると、体が安心したのか一気に力が抜け、ソファ―に深く吸い込まれる。


「……聞きたい事が色々ありそうだな」

「まず、なぜ私を助けた?」

「頼まれたからだ」

「……エ―スか?」

「いいや。『鷹の目』、ミホ―クだ」

「え!? ……」


思いがけない名前だった。

驚きながらも、レインの心に愛しさと懐かしさが込み上げる。

しかし、ミホ―クが偶然あの場に居合わせたとは考えにくい。


「どうして……」

「さあな……。それと、『火拳』については知らん……。俺が頼まれたのはあくまでお前の事だけだ」

「……」


(エ―スは辛うじて意識はあったが、酷い傷だった。生きているのか………)


少し考え込んだレインを見て、ロ―が口を開いた。


「火拳の事なら考えても無駄だ。なんせ、お前は一週間も寝てたんだからな……」

「一週間……!?」


レインは更に驚いたが、その拍子に痛みに襲われ、堪らず体を折り曲げた。


「う……」

「……」


痛がるレインを見て、ロ―は少し可笑しくなった。


(……よくもそんな体で刺し違えると言えたもんだ)

「む……なんだ?」


レインは少しむっとしながら、笑っているロ―を睨んだ。


「……」


先程までジュ―ドと同じ瞳を持つこの男を警戒していたが、しかし、二人は全然似ていないようにも思えた。


「では、最後の質問だ……」

「……」

「お前とジュ―ドは……、血縁関係にあるのか?」
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