Butterfly

□6.死の外科医
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それから三日かけて、ハ―トの海賊団はスカルトの領域へと入った。


「傷は……とりあえず塞がったな」

「あぁ。ありがとう」

「まだ完治はしてない。包帯を取るな……」

「動き……にくくはないな」


すぐに包帯を取ろうとするレインを見越してか、動きやすいようにうまく巻いてくれているようだ。


「本当に……助かった。ありがとう」


レインはもう一度礼を言った。

ジュ―ドを伐つ為にその弟の手を借りるというのは、少々変な気持ちではあったが。


「じゃあ行く。私が降りたらすぐにこの場を離れてくれ」

「あぁ……」


レインは立ち上がると、すぐに部屋を出ていこうとした。

しかし、それを引き留めるようにロ―が口を開いた。


「レイン! ……忘れるな。俺は医者だ!」

「!」

(そうか……ロ―)


レインはあの時聞いた言葉の意味を理解すると、晴れるような気持ちでロ―を振り返った。


「わかった!」


笑顔のまま部屋を出ると、既にクル―達がそこに集まっていた。


「おい……頑張れよ」

「本当に一人で大丈夫か?」

「みんな……」

「間違って軍艦斬るなよ!」

「はは! それはねぇだろ」

「いやいや、こいつならやりかねないんだよ。本当に……」


ここにいたのは目覚めて数日ほどだったにも関わらず、みんな温かい笑顔を注いでくれた。


「……」


レインは素直に嬉しくなり、思わず一人の胸に飛び込んだ。


「うわ! だから、やめろって!」

「いいな〜……ベポ」


この心地いい感触は癖になりそうだ。

最後だからか、ベポはいつものように抵抗しなかった。

レインはその温かさを十分に堪能する。


「なんなら、こいつ連れていくか?」


ロ―が少し口元を緩めながら言うと、ベポは慌ててレインから飛び退いた。


「キャ、キャプテン!」

「じゃあ、背中に乗っていいか!?」


レインは目を輝かせると、その背中に飛び乗る格好をしてみせた。


「いや、俺は乗り物じゃねぇ!!」


更に慌てるベポに、みんなが一斉に笑った。

レインは一人一人の顔を見比べ、最後に笑顔を作ると、


「みんな、ありがとう! 行ってくる!」


と、背を向けた。

レインが無事上陸したのを見届けると、船はすぐに潜水を始めた。

やはり、島中戦禍に渦巻いているようだ。

もたもたしてると砲弾が飛んでくるに違いない。


「で、やるのか?」

「……さっきの指示通りだ」

「キャプテン! あれを!」

「!」


少し離れた所に浮上し島を眺めていると、そこに一隻の海賊船が現れた。


「あれは、そうか……」

「どうする……?」

「ふっ……しばらく様子を見る」


船はまた、ゆっくりと潜水を再開し始めた。









7.終わりの終わり
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