Butterfly
□5.火拳
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「……ったく、しょうがねぇなあいつ。どこ行ったんだ?」
ジュ―ドを追ってきたはずのゾロは、森でしばらく彷徨っていた。
「お? 町か」
その時、森から城が覗いてるのが見えた。
スタンレ―はある国の歴史について調べていた。
「では、やはりあの男は……」
「あぁ、そうだ」
ディアナはふと立ち止まると、スタンレ―に振り返った。
「そういえば……レインと行ったのは、あのエ―スとかいう……?」
「えぇ。マスタ国まで一緒にと……何か?」
「……いや」
(あの男もまた、……運命に翻弄される)
二人は閑散とした広場に出た。
ジュ―ドは町自体は荒らしてはいなかったが、人がいない町なかはもう死んだも同然というほど寂しいものであった。
そこへ、一人の男が突如現れた。
「なんだ? この町は……全くひと気がねぇ」
「!」
「誰だ貴様!?」
「……なんだ、いるじゃねぇか」
(この姿、海賊か……?)
「ディアナ様……お下がりください!」
スタンレ―はディアナの前に立ち、剣を抜いた。
「この国に何しに来た!?」
「……立ち寄っただけだ。男と……女を捜している」
男は腰にある刀に自然と手を添えた。
「!」
(この三本の刀……もしや?)
「その捜してる女と言うのは……」
「名は、レイン! ……知ってるのか!?」
「……!」
(やはり! しかし………)
「捜してどうする気だ……?」
その質問に、男は少し焦れたように声を張り上げてきた。
「……どうするも何も、あれは俺のもんだから傍に置いとくだけだ!!」
「な……ッ!」
「……」
その時、後ろで黙って見ていたディアナがスタンレ―を手で制した。
「……お前が捜す男も女も、もうここにはいない。中に入れ……少し話をさせてもらおう」
「……」
スタンレ―は剣を納め、その男を城内へ入るように目で促した。
「……レイン……レイン?」
「……ん……もう朝か……」
「あぁ、……眠れたか?」
エ―スは錠を解いた。
「……」
レインは、手首の擦り傷にちらと目をやると、右手の袖をまくった。
「……?」
それは相変わらず肘の辺りまでを真っ赤に染めている。
「……なんだ?」
「広がっていない……」
夕べ右手が暴れだしたのはエ―スも知っていたが、困惑した顔のレインの頭に手を置くと、
「まぁ、よかったじゃねぇか!」
と笑った。
「……」
(矛先を変えたと言うのは、選択肢を増やすという事かと思ったが………)
その時、頭に置いた手を肩に滑らすと、エ―スが抱き寄せてきた。
「なんだ……広がってた方がよかったか?」
「いや……」
エ―スは未だ暗い表情のレインの頬にそっと手を添えると、優しく見つめた。
「レイン……俺を殺すか?」
「エ―ス……!」
レインは途端に気色ばんだ。
「冗談だ……」
レインの顔を見て、エ―スは笑いながら両手を挙げた。
「……本当に斬るぞ」
「ははは! やってみろよ!」
エ―スは素早くベッドから飛び降りた。
「レイン! 飯屋で待ってるぞ!」
エ―スはそう言うと、跳ねるようにそのまま部屋から出て行った。
「……ふ」
わざとか天然かわからないが、エ―スはいつも笑わせてくれる。
同じような宿命を背負っているとはとても思えない。
「……」
レインは手袋をじっと見た。
(シャンクス……わかってる)
いつまでかはわからないが、なるべく笑って過ごそう。
レインはそう思いながら部屋を出た。