Butterfly

□5.火拳
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エースの唇はとても熱かった。

それは、もちろん表現などではなく、温度が。

火の化身となったエースの唇が、舌が、指が。

まるで溶けた蝋が体を這うような感覚に、レインの息は漏れ、身を捩らす度に錠がガチャっと音を奏でた。


「熱いか……? レイン……」


その熱さの後に来る快感にレインの体は赤みが差し、薄っすらと汗が滲む。

それは月の灯りに反射して、きらきらとその身を輝かせた。

とても綺麗だ。

しかし、手首の錠はその身を赤く擦り、エースにはとても痛々しく見えていた。


「エ……ス…………ッ!」

「……!」


錠を見つめるエースの思いを見透かすように、レインは苦し気ながらも必死に声をあげる。


「外すな……絶対に……!」

「レイン……」


今までの事を考えると、気が昂った時にその魔物は暴れだす。

それほどに今のレインは冷静ではいられなかった。

この行為は一体なんなんだろう。

人に疎まれる者同士、慰め合っているのだろうか。

しかし、そこに愛は存在させてはならない。

絶対に。



気持ちを抑えようとするのとは裏腹に、体は熱を持ち、掠れた声が部屋を包む。

その姿はひどくエロティックだ。


「火傷はしねぇから、安心しろ……」

「!」


その時、一際熱い塊がレインに入ってきた。


「アァッ……!!」


途方もない熱と狂おしい程の快感がその身の芯を掻き混ぜる。

それと同時に右手には激痛が走り、今すぐ錠を外せとばかりに暴れだした。

その責苦に、レインは汗が一気に噴出した。

どろどろに溶けてしまいそうな熱さに腰が引けそうになる。

しかし、レインのそれは絡みつき、逃げる事を許さないかのように無意識にエースを締め上げた。


「……ッ」


エースの脳裏に、先ほどの話が過ぎる。

まったく変な感覚だったが、レインを陵辱していた王の言葉に妙に共感した。

このまま狂気に走れば、レインは自分を殺すだろうか。

それとも。


「ハッ……あァッ! ……ッ」


エースはその考えを打ち消すように一段と律動を速めた。
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