Butterfly

□4.赤髪の
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「おい、あんた! もう体は大丈夫なのか?」

「あぁ……世話になった」


その男は片手で荷物を受け取ると、もう一度礼を言って歩き出した。

自分の国へ帰るのだという。

まったくタフな男だ。

最初にその男の姿を目にした時はまさか息があるなんて思わなかったが。


「ふむ……バランスが取りにくいな……」


その動きは、初めて歩き出した幼児のように、どこかぎこちない。

まぁ仕方がないだろう。

その男には片腕が無いのだから。

多くは語らなかったが、恐らくどこかの戦争に巻き込まれでもしたのだろう。

家の中に戻ろうとドアを開けたところでふとある事に気付き、その男に叫んだ。


「なぁあんた! 名前は!?」


そう叫ぶと、そのいかつい男は転ばないようにゆっくりと振り返った。


「……スタンレ―」














「あなたに……愛される女は幸せだろうな」


不意に呟いたレインを、シャンクスはぎょっとした顔で振り返った。


「お前……裸でそんな事言うなよ……!」


レインはその様子を見てふふん、と笑う。


「まぁ……そうでもないさ。俺は海賊。お尋ね者だからな」


シャンクスはごろんと寝そべって天井を見つめた。


「……」

「お前は?」

「え……?」

「いるんだろ? 想う男が」


しばらく待っても返答が無いので、シャンクスは天井からレインに視線を移したが、どこか寂しげな笑みを見せるだけだった。


「シャンクス……一度城に戻ってみようと思うんだが」

「……あぁ。そうしろよ。城が今どんな状態にあるとしても、お前の故郷はそこだろ?」

「……」


しかし、レインは途端に不安になった。

嫌な思い出ばかりではないが、あれ以来国には一度も足を踏み入れていない。

なんだか恐ろしいような気さえする。


「レイン……その目でしっかり見てくるんだ。なんならついてってやろうか?」


レインの思いを察したように、シャンクスは微笑んだ。


「いや……一人で行く」


シャンクスは優しい。

しかし、これだけは甘えるわけにはいかないと、レインは自分の剣を見詰めた。
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