Butterfly

□4.赤髪の
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その夜、見張りを残してクルーは眠りについたが、シャンクスはまだ眠れずになんとなく船内をうろついていた。

昼間のレインから感じたあの嫌な気配の正体が気がかりで仕方なかったのだ。

無意識にレインの部屋の前で足が止まる。

その時、部屋の中から悲鳴とも唸り声ともいえない声が聞こえ、シャンクスは考えるより先に中へと踏み込んだ。


「レイン……!?」


ベッドで上体を起こしてはいたが、レインは 体を折り曲げ、小さく震えながら我が身を抱き締めていた。

表情までは見えなかったが、その様子からきっと怯えてるか泣いているに違いない。

シャンクスはすぐにレインの傍に寄った。


「……!」


その時、シャンクスの腰に携えた剣が素早い動きで一気に抜きとられ、その切っ先が眼前に差し出された。


「!」

「はぁ……はぁ……」


シャンクスを見据える瞳は半ば朦朧としているにも関わらず、それは獣のような殺気を帯びている。


「おい、どうした……!?」

「大頭!!」


他にもレインの声を聞きつけた船員が部屋に飛び込んできた。


「大丈夫だ! 騒ぐな!!」

「しかし……!」

「皆、部屋に戻れ……!」

「……」


異様な光景に驚きつつも、皆静かに部屋を出て行くしかなかった。

突き立てられた剣はそのままに、シャンクスはそっとレインの手に触れた。

レインがびくりと体を跳ねらせた拍子に切っ先で頬が切れたが、シャンクスはその手を離さず微笑んだ。


「もう大丈夫だレイン……。怖かったか?」


レインの見てるようで見ていなかった瞳が、シャンクスの優しい瞳をきちんと捉えた。


「シャン……クス……」


その途端持っていた剣が手を離れ、床をがらんと転がった。


「これ……」


レインはシャンクスの頬に触れ、その薄く滲んでいる血を見て自分の行いを知る事になった。

シャンクスはまだ震えているレインを片手で優しく包むと、その髪を柔らかに撫でた。


「ふ……お前は俺を驚かせてばかりだな……」

「シャンクス……ッ」


レインはシャンクスに子供のようにしがみついた。

久しぶりに見た悪夢は、それほどに恐ろしいものだったのだ。
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