Butterfly

□4.赤髪の
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「ど〜すんだよ! 軍艦来ちまっただろうが!」


やはり、最近立て続く海軍に対しての暴挙で一味は警戒されているらしい。

港はすぐ軍艦で固められてしまった。


「ん〜でも、その男には会ったんだろ? そいつ、強ぇのか?」

「!」


その瞬間、そこらの空気がぴんと張り詰めた。


「おいルフィ、空気読めよ……。そんなもん、あいつの姿見りゃわかんだろうが」


途端にウソップがコソコソと耳打ちする。

確かに、いつも傷が絶えないとは言え、ゾロはまたしても傷だらけだった。


「なんだ、負けたのか?」


ルフィに空気を読む、という芸当はできないそうにない。

その時、しばらく押し黙っていたゾロが目を剥いた。


「うるせぇ! 途中で邪魔が入ったんだ! まだ勝負はついちゃいねぇ!!」


(くそっ……!)


ゾロは最近苛々し通しだった。


「……おい、エロ剣士」


最近はコックではなく、剣士の上にエロがつく。


「あぁ?」


そんなたわいない軽口にさえも、ゾロは苛立ちを露わにした。


「そのジュ―ドって男は海軍に保護されたんだろ?」

「……」

「そう! だからあたし達は出航する軍艦を追うのよ?」


ゾロのかわりに、デッキに出てきたナミが答えた。


「また軍艦追うのか?」

「でもやつら、相当警戒してるはずだろ? 簡単には追わせてくれないんじゃねぇか?」

「う〜ん。ほんと、潜水艦でもあればいいんだけど……」


ナミは、レインの沈めた潜水艦を思い出していた。


「……」


その時、しばらく考え込んでいたゾロが立ち上がった。


「ルフィ……。頼みがある」

「なんだよ?」

「俺を……一人で行かせてくれ!」


その思いがけない言葉に全員がゾロを振り返った。


「なっ……!?」

「ゾロ!? だめよそんなの!」

「てめ……何かっこつけてやがんだ!?」


しかし、ゾロはそのまま頭を下げた。


「頼む……! これが俺のわがままだって事はわかってる!」

「……」


ルフィは真剣なゾロの様子を黙って見つめていた。


「いや……まて! てめぇ、『一人で行って』、『一人で帰ってくる』……のか?」


その時サンジの言葉に、全員がハッとした顔をする。


「……それが、なんだ?」


「ゾロ君……。それは、俺達との永遠の別れを意味する……!」

「はぁ? お前、不吉な事言ってんじゃ……」

「ゾロ! 無理よ! 絶対!! 不可能だわ!」

「だ・か・ら! 何でだよ!?」

「ゾロ! 頼むから、俺がいい薬作るまで待っててくれ!!」

「何の薬だ!? チョッパ―ッ!!?」


ゾロの一人旅は危険とか、そういう話ではなかった。



その時、騒々しい船をよそに、港から一隻の軍艦が出航した。
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