Butterfly

□4.赤髪の
16ページ/19ページ


「それが……いくら調べてもマ―カス・ジュ―ドという男について、何の記録も出てきません。偽名か、あるいは……」

「第三者が意図的に隠しているか……、だな」

「えぇ……」

「そのジュ―ドという男が各国に出入りしているのは何の為だ?」

「色んな王に取り入り、その軍事力や科学力を利用しようとしているのではないかと……」

(なぜそんな事を……でかい戦争でも起こそうってのか)


シャンクスの嫌な予感は募った。

その男が世界に何かする気なら、もはやレイン一人の問題ではなくなるだろう。


「!」


その時、またしても虫酸が走るような嫌な感覚がシャンクスを襲った。






「はぁ……はぁ……」


城内だ。

また自分は城内を走り回っている。

夥しい死体の山。

辿り着いた王座の間。

扉を開けるとやはりそこには、父と母が捕らえられている。

夢だ。

いつもの夢。

しかし、二人の首を切り落としたのは、自分であった。

血まみれの自分。

もっと殺す人間はいないか飢えた獣のように探し回る。



もっと血が見たい。

もっと血が欲しくてたまらない。

もっと、この剣に血を吸わせなければ。



「……レイン、レイン!」


突如肩を揺らされ、レインはびくんと目を見開いた。


「はぁ……はぁ……」

「おい、しっかりしろ!」

「剣……私の……剣は!?」


まだ焦点の定まらない視線のまま、レインは体を起こし髪を振り乱して自分の剣の姿を求めた。


「剣ならそこに……ベッドの横だ」


レインが憑かれたように夢中で剣を拾い上げたので、シャンクスはまた刃を突きつけられるかとひやりとしたが、それはすぐに床へと滑り落ちた。


「!?」

「はぁ……はぁ……」


レインは、自分の右手を信じられないといったように見詰めていた。

シャンクスは素早くレインの手を掴むと、手袋を取り上げた。


「!!」


レインの、ほんの指先にだけ付いていた赤い染みは、いつの間にか爪の下にまで広がっている。


(まさか……! 短時間でこんなに!?)

「いやぁぁぁっ!!!」

「レイン……レイン……!! 大丈夫だ! 落ち着け!!」


頭を抱えて叫ぶレインを、何とか落ち着かせようとシャンクスは必死で抱きすくめた。

そこへ、悲鳴を聞きつけたスタンレ―が部屋に飛び込んでくる。


「レイン様!!」


半ば狂ったように泣き叫ぶレインに慌てて近づくが、その指先を見た途端、スタンレーは足を止めた。


「その指は……ッ!」

「……スタンレ―! 知ってるのか!?」

「……」


スタンレ―は表情を固くしたまま言葉を呑み込むようにして口を閉じた。


(スタンレ―……?)


その時、頭を抱えたまま震えていたレインが、髪を乱し、涙で濡らした顔をゆっくりと上げ振り向いた。


「スタンレ―……血が……落ちない……」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ