Butterfly

□2.鷹の目の男
4ページ/10ページ



「なぁ、あんた賞金稼ぎかなんかか?」


横で寝ている男が聞いた。


「さぁな……。それより……」


レインは再度男の上に跨った。


「おいおい……身がもたねぇぞ」

「戦闘のあとは……血がたぎる……」



あれから二年が過ぎた。

ジュラキュ―ル・ミホ―クとは、大層有名な男らしかった。

剣豪と聞けば誰の口からも一番に名が上がるほどだ。

ミホ―クとは拠点は同じだが、共に行動する事はほとんどない。

今は古城に好んで住んでいるが、姿を見ない日の方が多かった。

レインは、果てて寝ている男を後に、外に出た。


「また男と寝てたのか」


レインは驚いて声の方に振り向いた。


「ミホ―ク……来てたのか」


レインは海賊船を一つ潰した後に、二人で何度か訪れた事のある町に来ていた。


「まったく……今のお前を見て王女などとは誰も思わんだろうな」

「ふん……あんたも寝たくなったか?」

「何度も言わすな。尻の青いガキには興味ない……」


ミホ―クは憎まれ口を叩きながらも、この二年でさらに強く美しくなったレインに目を細めた。

だが、結局レインには指一本触れてはいなかった。


「きちんと服を着ろ」


ミホ―クは胸元から覗く傷をちらりと見た。

あの異常な体験がそうさせるのか、レインは時々とても不安定になった。

必要以上に血を恐れたり、求めたりした。

貪欲に強さを求めるがあまり、命を削るような戦い方をするレインにミホ―クは危惧の念を抱いていた。


「今日は何かあったのか?」

「野暮用だ……」


レインはボタンを留めながら、黙って歩くミホ―クを見ていた。

レインはよく一人で海賊狩りに出かけていた。

何度か死にかけた事もある。

だが、目を覚ますといつも古城のベッドの上だった。

強くなれなければ生きる意味はない。

だが、今の自分はミホ―クに生かされているといっても過言ではなかった。


「ミホ―ク……」


レインは何か言いかけたが、突如背後に気配を感じ、振り向いた。


「――レイン様」

「影か……なんだ?」


全身黒ずくめのその男は、いつも近づくまで気配を完全に殺している。


「これを」

「!?」


影が差し出した一枚の写真には、他の王族に混ざって写るバルカンの姿があった。

そしてもう一人、肉眼で確認するのがやっとという大きさで、その男は写っていた。


「ジュ―ド……!」


この二年、ジュ―ドは巧みに身を潜めていた。

しかし、バルカンとの繋がりは完全に絶ってはいなかったようだ。


「……すぐにスタンレ―と連絡を取れ!」

「はっ!」


影はすぐに立ち上がったかと思うと、まさにその名のごとく消え失せた。


「ミホ―ク!」


そのやり取りを黙って見ていたミホ―クは、前を見据えたまま言った。


「――行け」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ