Butterfly

□1.終わりの始まり
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「あ〜釣れねぇな〜」

「ルフィ……餌つけねぇと釣れねぇぞ」

「だってさっき喰っちまったもん! うまかったなぁ〜」

「アホ!!」


今日も空は快晴だ。

皆、デッキに出てゆったりと過ごしていた。

そこに、治療を終えたレインとチョッパ―が出てきた。


「……」


その時、露骨に険しい顔をしたゾロとレインは視線がぶつかった。

昨日レインが言った事で警戒してるのだろう。

しかし、レインは事も無げに視線を外すと、そのままルフィに近づいた。


「ルフィ! ナミから聞いた……。ありがとう」

「おぉ、いいぞ? 別に。なぁ、お前も釣りするか?」

「いや……した事ないが……」

「マジか、お前!? 楽しいからやってみろよ!」


ルフィが無理矢理レインに竿を持たせた時、ウソップが慌てた様子で駆け寄ってきた。


「おい! ちょっとこれ見てみろ!!」


ウソップは届いたばかりの新聞をみんなの前で広げた。


「!?」

「これは……!?」


そこには、ノウマ王国崩壊の記事が載っていた。

しかし、レインの事には一切触れておらず、かわりに主犯は麦わらの一味と記されていた。


「!!」


レインが一番驚いていたが、すぐに眉根にしわを寄せ立ち上がった。


(クソッ……政府は……あいつらは何も変わっていない……!)

「あの時に俺らの船が目撃されたようだな……」


ゾロがレインを見据えて言った。


「すまない……。やはり、私は船を降りる」

「レイン!? ちょっと待って!」


今にも海に飛び込みそうなレインを止めながら、ナミは助けを求めるようにルフィを見た。


「おれ……また懸賞金上がるんじゃねぇか!? シシシ……!」


ルフィは楽しくてたまらないと言うように笑っている。


「おい! お前一体幾らになんだよ! 追いつけねぇだろうが!」


サンジが軽く蹴りを入れた。


「いや〜新聞に載っちまったかぁ! これでまた俺の伝説が世間に広く伝わる事になるな! そうそう、前冒険した時もな……」


ウソップは長い鼻をさらに長くして、嘘のような話をまたチョッパ―に聞かせていた。


「……」

「ふふっ誰も気にしてないみたいよ?」


ナミは戸惑った顔のレインに笑いながらウインクしたが、ゾロはすれ違いざまに不機嫌な声で言った。


「俺は認めてねぇぞ……」

「……」


その時、船が大きく揺れ、皆一斉に足元を取られる。


「きゃあ!」

「なんだ!?」


目視できる範囲に、突如軍艦が三隻も現れた。


「いつの間に!?」

「いや、あれは……ただの軍艦じゃねぇ! 潜水艦だ……!」

「海の中を追跡してたってわけ!? ずるいわよ!」


その時、ルフィがいち早く構えた。


「ゴムゴムのぉ〜……!!」


しかし、その三隻は、あっという間にまた海中へと姿を消した。


「おっとっ! ……危ねぇ〜! 海に落ちるかと思った!」


その時、またしても船を衝撃が襲う。


「うわっ!!」

「汚ねぇ……! 海中から魚雷で攻撃してきてんだ!!」

「きゃ……! このままじゃ船がもたないわっ!!」

「……」


混乱する皆から離れ、レインはゆっくりと魚雷が飛んでくる方向へと向かった。


「……おい!!」


しかし、それに気付いたゾロが道を阻む。


「引っ込んでろ! てめぇは海賊じゃねぇ! 政府と戦う理由はねぇだろうがっ!!」

「……」


ゾロをちらと見ただけで何も言わず、一気に駆け出すと、レインは剣を抜いて海に飛び込んだ。


「おい!」

「レインちゃん!?」

「ゾロ! 早く追いかけて!!」


その時、先ほどとは違う衝撃が一味を包む。


「……!?」

「今度はなんだ!? ……ッおい……海見てみろ」


サンジが愕然とした表情で海を指差した。


「!?」





海が、割れていた。



地平線の向こう側までぱっくりと口を開けたそれは、まさに割れているという表現しかできなかった。

割れ目は滝のように絶えることなく水が滴り落ちている。

信じられないものを目の当たりにして、しばらく誰一人動けなかった。


「何が……起こったの……? レインは!?」


ナミが困惑したように海をのぞこうとした瞬間、ぼこぼこと大きな音をたて海中から何かが浮いてきた。


「……!」


金属の塊だ。

先ほどまで船だったものの破片は、大きなあぶくを立てながら、やがてしぶきと共に海面に浮き上がった。

次々と浮き上がってきたそれは、最後にとてつもなく巨大な姿を皆の前に現す。


「まさか、潜水艦が……!?」


潜水艦は三隻とも真っ二つになっていた。


(同じだ……あの時と……!)


その光景を息を呑んで見詰めるゾロの目の前で、一際高いしぶきが上がった。

レインが海中から飛び出してきたのだ。


「はぁ……!」


水を撒き散らし、濡れた服を体にまとわり付かせながら船上で息をつく。


「……レイン! よかった!!」


レインは滴り落ちる海水ごと髪の毛を掻きあげると、


「はぁ……これで私も……お尋ね者の仲間入りかな……?」


ゾロに横目で笑いかけた。


「……ッ」


ナミはレインに抱きつき、他の仲間も傍に寄っていった。

しかし、ゾロだけはまだ動けなかった。



(同じだ……あの時、鷹の目を最初に見た時と……!)
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