Butterfly
□1.終わりの始まり
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レインが医療室の前を通ると、ドアが少し開いていたせいで話し声が聞こえてきた。
「ねぇ……どうにかならないの?」
「あの傷は……難しいだろうな……」
ナミとチョッパ―だった。
ナミは風呂場でレインの傷を見て以来、心を痛めていた。
まるで自分の肩に入っていたタトゥ―のようで、体の傷がレインの心の傷を、更に深くしているようにも思っていた。
「別の医者にも同じ事を言われたよ」
「!」
二人が振り向くと、いつの間にかレインが中に入ってきていた。
「レイン……」
「ありがとう……。でも、私はこの傷に誓いを立てた。だから、それを成し遂げるまではどのみち消す訳にはいかない」
「……」
レインはそれだけ言って出て行こうとしたが、ナミは引き止めるように続けた。
「ねぇ、ジュ―ドって男の居所はつかめてるの?」
「いや……。だが、そう遠くには行っていまい。まぁ、何年かかろうと探すだけだ」
「そう……じゃあ、見つかるまで乗ってかない? 実は、ルフィに許可はもうとってあんの!」
「え……?」
「そうだな! まだ治療も途中だし。そうしろよ、レイン!」
チョッパ―までもが嬉しそうに言うので、レインは驚いた。
(さっきの奴らといい、なぜここまで………)
今自分が海賊船に乗っている事を忘れてしまいそうだ。
「しかし……私がいると迷惑が……。先の事件で政府はもう動いているかもしれない」
「あはは! 大丈夫、いつもの事だから!」
まだ戸惑っているレインをナミは笑い飛ばした。
「どうして……」
「え?」
「いや、……ありがとう」
レインは質問を引っ込める代わりに、また柔らかく微笑んだ。